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fellow key 9
「……呆れた?」
「なんというか、俺が保護してマジで良かったと思ったよ。今、本気で」
俺があまりに愕然としていたからか、環が窺うように聞いてきてため息が洩れた。
まさかここまで危うい存在だったとは。さすがにこれは想像以上だ。というか、こんな存在を今まで放置していたって事実に、知りもしなかったくせにぞっとする。手前勝手な感想ではあるけれど、本当に出会ったのが俺で良かった。
……しかし、ファーストキス、なぁ。多くのうちの一回だと思っていたら、急に甘酸っぱいものが降ってきた。
「あー、悪かったな、知らずにして」
「ううん。優ちゃんが初めてで嬉しい。てか、初めてを優ちゃんに貰ってもらえたことが嬉しい」
「……お前は、まったく……」
知らなかったとはいえ、だいぶさらっとしてしまったことが申し訳ない。だけど環がまた本当に嬉しそうにそんな言い方をするものだから、思わず頭を抱えた。
あんな出会い方をして、実際かなり遊んでいるだろうくせに、急に初々しい反応をされるとこちらが困る。
小悪魔だとか自分で言っていたけれど、確かにこれを計算でやっているのなら立派な小悪魔だと思う。ただし、本当に計算でやっていたら、だ。
「いきなり大人のキスしちゃったね」
そんなことを頬を染めて言ってくる環が、とても考えた上での行動には思えず、そのせいで自分の内側がぐちゃぐちゃに掻き回された気がした。
おかしい。環にここまで入れ込む程の感情を持っていなかったはずだ。それなのに、なんでこうも掻き乱されるのか。
「あ、てっぺん」
「環、俺はお前が好きだ」
「えっ? ちょっ、優ちゃん」
胸の中に溜まった思いをそのまま口にした突然の告白に、環が目に見えて慌てる。
だけど俺の方は、実際それを口にして、そのとてもわかりやすい響きになんだか嬉しくなった。自分のことながらわからなかったもやもやの正体に、自分の口から出てきたその言葉がひどくしっくりハマる。
そうだ。俺はこの危なっかしくて、くるくる表情が変わるこの目の前の環が好きなんだ。
その気持ちをもっとはっきり伝えたくなって、もう一度、さっきよりも丁寧にキスをすると、今度は少しだけ慣れたキスが返ってきた。
「んっ……ん、ふ……んんっ」
洩れる吐息はさすがにエロさが滲んでいて、そのくせ慣れていない舌使いが頭の芯を痺れさせる。
『男相手』だと理性の欠片が頭の片隅で騒ぐけれど、それがなんだとねじ伏せてしばらくの間それだけに溺れた。
「……ん、ね、優ちゃん、見られるよ」
どれだけ熱中していたのか、環に言われて初めて地上が近づいていることに気が付いて慌てて体を離す。それだけじゃ足りなくて、最初に環が座っていた座席の方に移ると、濡れてしまった唇を袖で拭った。危うく下からも見える位置でキスし続けるところだった。
「続きは帰ってから?」
「……だな」
窓で見える位置の下、そこでドアが開くギリギリまで手を繋いだままそっぽを向いていた俺たちは、果たしてどう見えていたのか、そればっかりはあまり聞きたくない。
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