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fellow key 10

 それから二人して怪しく思われないぐらいの速足で遊園地を後にし、車に駆け込んだ。日はほとんど落ち、暗い駐車場から帰りだす車がぽつぽつと見える。  本来ならもうそろそろイルミネーションが点灯して、そこを歩くだけでもデートらしくなっただろうけど、今はそれどころじゃない。早く帰らないと主に俺がまずい。  ただそんな焦りからかシートベルトをつけるのを手間取っていると、環に袖を引っ張って急かされた。 「早く帰ろ。早く優ちゃんとしたい。てか車ん中じゃダメ?」 「ダメに決まってるだろ」 「決まってない。できるよ」  言い方からしてそれは経験からくる断言だったから、複雑な気持ちでもう一度ダメだと首を振る。  たとえできるとしても、そして環がそれを言い切るくらいにしていたとしても、その数の中には入りたくない。  だからさっさと帰ろうと袖から環の手を外したら、環にも首を振られた。 「優ちゃん、俺、誰かと『したい』じゃなくて、したい『誰か』がいるの初めてなんだよ」 「……事故りたくないから頼むから黙っててくれ。今は、とにかく、帰る」  自称小悪魔の無自覚天使は必死な顔で俺を煽ってくれて、一度目をつぶって深呼吸をしてから車を出した。  環といるとペースが狂わされる。  ついこの前まで男同士で付き合うなんて考えもしてないくらいの別世界の話だったというのに、今や男子高校生に煽られて家に帰るために車を飛ばしていたりするんだから世の中なにがあるかわからない。  本当に、まさか環に会ったことでここまで自分の進む道が変わるなんて思ってもみなかった。  なによりもそれで後悔してないどころかよりアクセルを踏み込んでいるのだから、本当に人というものはどう変わるのかわからない。

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