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fellow key 11

「……なんか、照れるね」  なんとか事故ることもなく家に辿り着き、家に上がるなり早々に環がシャワーを浴びに風呂場にこもって、最初に会った時とは違うそわそわ感でいてもたってもいられなくなる。  戻るなら今だと頭の中の誰かが言うけれど、どこに戻ろうときっと環と会ったらまた同じ気持ちで同じ時間を迎えるだろう。それがわかってしまうから余計この時間がそわそわするんだ。  それからしばらくして、Tシャツに下着姿で風呂から出てきた環は、ぎこちなくベッドに腰を下ろした。足の長さもさることながら、こういうラフな格好をするととても子供っぽくて、そのくせ微かな色気を漂わせるからこいつは恐い。 「流れでしちゃえば平気なのに、改まると恥ずかしいっていうか」 「そういうもんだろ、普通」  むしろ最初がおかしかったんだ。平気で会ったばかりの男とホテルに行って、無防備に風呂に入ったり一緒のベッドで寝たり。  まずはちゃんと知り合って付き合ってからこうなった上で緊張するのが当たり前なのに。 「……優ちゃん、ホントにいいの?」 「なにを今さら」  それこそ今さら緊張でもしているのか、妙にかしこまった環がそんなことを聞いてきたから、答えの代わりにキスをしてやる。そうしたら、環に引っ張られてそのままベッドに倒れ込んだ。 「んん……キスって、こんな気持ちいいんだね。それとも優ちゃんとだから特別?」 「さあな。……他で試すなよ?」 「この前思い知ったからやんないよ。別に好きで不特定多数の男と寝てたわけじゃないんだから」  触れるだけのキスを何度もしながらシャツの中に手を潜めたタイミングで心にぐさりと来るワードが降ってきて思わず固まる。  不特定多数の男と寝てた。  わかってはいたことだけど、改めて言葉にされるとその事実はなかなか刺さる。  そうだよな。キスの経験がなくてもそれ以上の経験はきっと俺とは比べ物にならないくらいしているんだろう。そう思うと少しばかり出す手が鈍る。 「……ちょっと言い直してもらっていい?」 「優ちゃんに会うまで時間がかかっちゃったよ!」 「そっちがいい」  俺のテンションダウン具合が如実に伝わったのか、環が即座にポジティブな方面に言い直してくれて、ありがたくキスに戻った。  それからシャツをめくり上げそのまま脱がせると、身を屈めてまだシャワーの湿度が残っている肌に唇で触れる。  若々しい肌はそれなりに引き締まっていて、うっすらついた腹筋をなぞるように指を這わせると環がくすぐったそうに声を上げた。だからそのまま手を下げていき、腰に回すと下着に引っかけて長い脚から抜いてやる。  さすがにまだ口で咥えるというのはハードルが高いけど、手でする分には慣れたものだ。むしろ自信がつき始めているのは、軽く触れただけで環自身が芯を通し、合わせて吐息が洩れ出すからだろう。 「うう、なんか、優ちゃんにしてもらってると思うと罪悪感で興奮する」  どんな性癖だよと言いたいところだけど、正直俺も同じだったから黙っておいた。  感じている様子を見られるのが嫌なのか、両手で顔を隠して呻いている環が見ていないのをいいことに口の端で笑う。  罪悪感で興奮するというのは言葉にするとアブノーマルだけど、まさしくその通りで、俺の手で感じている環を見て興奮するのだから我ながらなかなか変態的だ。 「ん、ぅ、もうイきそ、だから、優ちゃん、観覧車で言ってくれた言葉、もう一回言って?」  ギリギリの振りをしてきっちり恥ずかしいことを要求してくる環を軽く睨んで、それでも身を屈めて耳元に唇をつけてやった。 「……環、お前のことが好きだ。だから抱きたい」 「ううう、もー優ちゃんサイコー!」  すると感激のあまり抱きつかれて熱烈なキスを食らう。とりあえずそれを受け取りながら思い出したのは、初めて抱き合った時に言われた言葉。  最高の反対。 「この前は最低っつってたくせに」 「この前はこの前。だってノンケの優ちゃんが俺に欲情してるって最高じゃん!」 「なんか、すげーお前のこと可愛くなってきた」  黙って立ってればモデルみたいなスタイルをしていて、制服を着て地味にしていても目に留まってしまうくらいのイケメンなのに。  全力で俺に向かって喜びを表す環が、今、可愛くて仕方がない。

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