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fellow key 13

「あ、優ちゃん、大丈夫だからそのまま入れて。自分で慣らしてきた」  我に返って準備しようとした俺にそんな声がかかって、拍子抜けしたのは一瞬。それならと俺の方だけ用意をして、早々に環の中に入り込んだ。 「あぁあ……優ちゃ、あぁッ」 「うん」  俺が拙い知識で慣らすよりもやっぱり慣れている本人がする方が楽らしく、拒むことなく挿入を許す環の中はとても熱く、呆気ないくらい簡単に俺を迎えてくれた。それだけじゃなく、細やかに締め付けてはこちらにも快感を伝えてくる。  口でされた時も思ったけど、なんでこうも確実に追い立てるように刺激してくるんだろうか。本人が意識しているか知らないけれど、余裕がなくなって困る。  ただ環もこの前は違う理由で楽しむ余裕がなかったようだけど、今もあまりありそうには見えないのが幸いか。 「や、ばい。もうイっちゃいそう……っ」  軽く揺さぶるだけで上擦った声が上がり、ついた手に力がこもる。力が入っているせいで筋が浮いている手が妙にいやらしくて、煽られた気持ちで背中に口づけたら子犬みたいに啼かれた。  意識をしてやっているようには思えなかったから、自然とそうなるくらい男に抱かれたってことだ。それを思うと嫉妬で心がじりじりして、その気持ちをぶつけるように奥へ奥へと突き上げる。腰を打ち付ける音とベッドが軋む音、そして環の途切れ途切れの喘ぎが響き、自分がなにをしているかを耳からしっかり理解させられた気がした。 「んっ、あ、なんで優ちゃんだと、こんなに、気持ちいいんだろ……ッ」 「気持ちが入ってるからじゃねーの?」  なんでと言われて俺が答えるのもなんだけど。  環があまりにも気持ち良さそうに、そして本当に不思議そうに言うもんだから、思わずそう答えてしまった。こちらだってあまり余裕があるとは言えないのに。 「お前が言ってたじゃないか、自分で。俺じゃなきゃ満足出来ないってことは、俺だったら満足出来るってことだろ?」 「んん、あっ、優ちゃん、頭いい……っ、あ、気持ちもいいっ、優ちゃんの、すごい好き」  その説明でしっくりきたのか、それともあまり頭が働いていないのか、環はイイと繰り返しながらシーツを引っ掻く。  なんていうかこいつ、体の気持ち良さだけを求めてるせいで、気持ちというか精神面がついていってないんじゃないだろうか。  環ほどに経験を重ねているわけでもなく、勘違いでも自らのテクニックを誇れることもない俺でそれだけ体が感じるってのは、つまり相手が「俺」だから。そういうことだろう。  むしろそうとしか答えがないだろうに、環は本当に疑問だったらしく、その疑問に翻弄されているせいで余計に体が反応しやすくなっているらしい。 「や、あ、そこ……っ!」  いいところに当たるたびに震え、汗を掻き、体を火照らせ、声を上げ、体をいっぱいに使って俺に気持ち良さを伝えてくる。かと言って自分から煽るわけでもなく、それなのに俺の動きにいちいち反応してくれるものだから、こちらとしても俄然やる気が出るわけで。 「あ、ああっ、い、イくっ」  反応を見ながら良さそうなところばかり突き上げていたら、限界が来たのか環が切ない声を上げ、肘を折って頭を枕に埋めた。俺と繋がった腰だけを高く上げたその姿は、間違いなく男だからこそ、それだけで今まで覚えたことのない加虐心に満たされた。  なんだこの自分の中に湧いてくる支配欲は。こんなものが俺の中にあるなんて知らなかった。  そのせいで突き上げる力が強まったのは、自分でも知らなかった面で、たぶん、本来なら知らなくて良かった面。 「や、あっああっ……ッ!」  それに耐えられなかった環が鋭く息を吸い込み、吐き出すと同時に果てた。そのまま脱力して倒れ込もうとしたから、軽く腰を叩いて声をかける。 「環、俺がまだ」 「あ、ごめ……っ」  すると慌てて体勢を戻す環の健気さが、また俺の知らないどこかに突き刺さる。なんだろうこの環のすべてを支配しているような感覚は。  ……どうしよう。いけない趣味に目覚めそうな予感。

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