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第5話

今日、昨日、一昨日……… 全部で一体何千枚になったのだろう、全てのデータに目を通した正弘さんは、深い深い溜息をついた。 「………ダメだな、少し日を置こう。今これ以上撮っても無駄だ。」 ─── 重苦しい空気の中、正弘さんがホカホカと湯気の立つ美味しそうな味噌汁を運んでくれた。コトンと優しい木の音が耳に入ると、まるで言外に慰められているようで、余計に惨めになった。 「ンな顔すんな。飯が不味くなるぞ。」 「ごめん…」 一向に声色が明るくならない俺に正弘さんはこれ以上は無駄だと判断したのか、珍しくテレビをつけた。誰もが知る大御所の芸人と今話題のタレントが騒がしく談話するありきたりなバラエティ番組だった。テレビの向こうで響く大笑いが耳障りで、俺は味噌汁をすする。少ししょっぱく感じた。 様々なシーン、シチュエーションで撮った。スタジオだけでなく外でも撮った。それこそ何千何万という枚数をすでに撮ったと思う。しかし正弘さんはそのどれにもオッケーを出さなかった。 何がダメなんだろう。 いつも通りやっているつもりなのに。 ほろりと零れた涙が味噌汁にダイブしていった。一粒こぼれると、あふれるのはあっという間で次々にダイブしていく。 「あーあー、泣くな。」 「ひっく…正弘さん、俺、おれ…」 「やめるなんて言ってねーよ。今はやらねーと言ってるんだ。」 「俺、俺何がダメかな?どっ…どうしたらいい?」 正弘さんは曖昧に笑った。 テーブルの向こうから手を伸ばしてきた正弘さんが、くしゃりと俺の頭を撫でる。正弘さんは俺に何が足りないのかわかっているように見えて、俺は思わず離れて行こうとしたその手を掴んだ。 「正弘さん、正弘さんお願い!教えて!俺なんでも…ッ!?」 言葉を遮られたのは唇を塞がれたからだと気がつくのに、随分と時間を要した。

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