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お祝い
今日は僕の家には久しぶりのお客さんが来る。
この春、晴れて中学生になる従兄弟の伊織 の入学祝いをするために母さんがみんなを家に招待した。
伊織と、おじさんとおばさん、
そして何故だか周さんも招待された。
早目に来た周さんが台所を手伝いながら、少し困惑したような顔で母さんに聞いている。
「あの……親戚のお祝い事に俺がなんで??」
確かにそうだよね。
僕だって今朝起きるなり周さんを呼んでるか母さんに確認されて、慌てて連絡を入れたんだ。
「え? だって、英太 さんいないから……それにお祝いするなら沢山いた方が楽しいでしょ? 周君だって家族みたいなものだし」
英太さんとか言っちゃって……
家にいる時は、母さんはちょくちょく父さんのことを「英太さん」と名前で呼ぶ。
ほら、周さんキョトンとしちゃってるじゃん。
「周さん、英太ってのは、僕の父さんです」
僕はそう周さんに説明した。
「竜太の母ちゃんは父ちゃんの代わりに俺って事を言ってんのか? 違うよな? 人数合わせ? ……母ちゃんって天然?」
天然? どうだろう……?
父さんはちょっと変わった所があるけど、母さんは普通だと思う。
そんな話をしながら二人で顔を合わせてクスッと笑う。
「それにしても美味そうな匂い! あのオーブンに入ってるケーキは竜太が作ったの?」
最近料理やお菓子作りを始めた僕に、母さんは何かデザートを作れと言ってきた。だから得意なチーズケーキを作ってみたんだ。
「そうですよ。周さんの好きなチーズケーキ作りました。もうじき焼きあがると思います」
周さんも来てくれたからちょうどよかった。
このチーズケーキは僕が周さんの誕生日の時に、甘さを調節して周さん好みの味にするために猛練習したケーキ。今では僕の一番得意なチーズケーキ。
母さんもこのケーキが好きだって言ってくれてる。
「伊織もみんなも絶対喜ぶよ」
楽しそうな周さんが僕の頭を撫でてくれる。
一緒に台所に立って、こうやって仲良く会話して……本当に家族みたいでなんか嬉しい。
思わずにやけてしまい、僕は慌てて顔を叩いた。
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