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家族みたいなもん

春休みもあと僅か── 休みの間は俺は殆どバイトをして過ごしていたけど今日は休みだ。 朝っぱらから電話で起こされ腹が立ったけど、その電話口から可愛い竜太の声がしたから俺はスッキリ目が覚めた。 『周さん、おはようございます……ごめんなさい。もしかしてまだ寝てました?』 「んにゃ、大丈夫」 『周さん、今日は夕方からバイトですか? もしバイトなかったら僕の家に来て欲しいんです』 てっきりお家デートのお誘いかと思って行ったら、何故か俺は竜太の母ちゃんの料理の手伝いをやらされて…… 聞いたら伊織の中学の入学祝いだと言われ驚いた。 だって俺、こんな場にいてもいいのかな? 伊織の父親と母親も来るって言うし、俺どう考えても部外者じゃん。 竜太の母ちゃんは笑って「家族みたいなもんだから」と言ってくれるけど、ちょっと緊張する。 それにお祝いだってわかってれば俺も何か用意したんだけどな…… それを竜太の母ちゃんに言ったら気持ちだけで十分って笑って言ってくれた。 俺は物心ついた頃からお袋と二人暮らし。 家族はお袋たった一人。 こういった親戚同士の集まりなんて、勿論した事もない。 なんか胸の奥の方がくすぐったい感じだった。 伊織は相変わらず竜太にそっくりなくせに超生意気。 ムカつくけど、やっぱり竜太に似てるせいか可愛く思えてしまう。 前に会った時よりまた少し背が伸びた? そう言うと、わかりやすいくらい機嫌が良くなる。 単純な奴……でもかつての自分もこんなだったよな、とちょっと可笑しかった。 今夜は竜太の家に泊まらせてもらう。 伊織も一緒だ。 布団を運び、竜太の部屋に並べて敷くと早速伊織が布団にゴロゴロして遊び始めた。 「……なんだよ! ジロジロ見んな!」 やる事が子供だなぁってバカにして見ていたら怒られた。 竜太の母ちゃんがやっぱり天然なのか、俺と竜太、二人で一緒に風呂に入れと言ってきた。勿論深い意味はない。単に人数が多いからさっさと済ませろって事だと思う。でも明らかに動揺している竜太が面白かった。 「俺は別に構わないけど? 竜太、風呂行こ」 わざとそう言ってみると、真っ赤になる竜太。 「一人ずつ入ります!」 あ……そうだ。 そういや俺、伊織に聞きたい事あったんだっけ。 俺は正月明けに伊織と話した事を思い出し、二人で話がしたかったから竜太に先に風呂に行くように勧めた。 「僕、後でいいですよ。周さんか伊織、お先にどうぞ」 「いや、いい……竜太が先に入んな。俺ちょっと伊織と話したいし……」 「………… 」 なんとなく竜太にジトっと嫌な目で見られたような気がしたけど、俺はモタモタしている竜太を追い出すように背中を叩いた。

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