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Kiss
周さんの顔が近づいてくる──
僕はドキドキしながら、目を瞑って優しい口付けを待った。
………?
周さんは僕の期待を裏切り、唇近くの頬へ軽くチュッと口付けるだけ。
まだキスしてないよ……なんて言ってたくせに。
目を開けて周さんを見ると、にっこり笑って僕の頬を撫でた。
「可愛いなぁ。これ以上やったら俺、止まんなくなるから」
「………… 」
周さんらしくない。
いつもならそんなのお構いなしに自分のしたいようにするのに。
どうにももどかしくて、イライラする。
僕の上から退こうとする周さんの腕を掴んで強引に引き寄せた。
「……? おっと! ……危な 」
フラついた周さんは僕の上に倒れこむ。僕はそんな周さんにしがみつき、抱きついたまま頬を擦り寄せた。
「ちゃんとキス……してください。僕キス、ちゃんとしたいです……」
周さんの耳元で、恥ずかしさを堪えて小さな声でそう言った。だって、あんな風にされちゃったらしょうがないじゃん。僕だって本当は我慢なんかしたくない……
周さんが僕の顔を再度見つめた。
「俺とキス……したい?」
意地悪な顔。
わざわざ聞かないでよ。恥ずかしいじゃん。
「周さん……意地悪。キス……したいです」
僕がやっとの思いでそう言うと、周さんは顔を少しだけ赤くして笑ってくれた。そして僕の頭をひと撫でして、やっと唇を重ねてくれた。
ゆっくりと確かめる様に周さんの舌が僕の中に入ってくる……
それに僕はこたえ、舌を絡めた。
優しく舐られると体がぞわぞわとしてきてどうにも堪らなくなってしまう。
直接肌に触れたい……触って欲しい……
どんどん快感に支配されていく。
勝手に足が周さんを求めて開いてしまう。
あっ!
そうだ、伊織……!
いつまでも僕と舌を絡めている周さんの胸を押し、我に返った僕は周さんから離れた。
「周さんっ……待って、伊織戻ってきちゃうから……もうおしまい 」
そんな僕にお構いなしに、周さんは僕の両腕を掴み離してくれない。
息も荒く首元や頬にキスを落としてくる。せっかく周さんだって我慢してくれてたのに、僕が焚き付けてしまったんだ。
「待って……んんっ、周さん……もう……あっ……おしまいです」
ジタバタしてたらやっと離れてくれた。
もう……
僕から退いて布団の上に座った周さん。
「ほら、竜太起きて。はい、ここ座って」
周さんの前に僕を向かい合わせに座らせ、今度は子どもがするような可愛いキスをする。チュッ……チュッ、と啄むように唇を重ねた。
なに? どうしちゃったの? 周さん可愛い……そしていつもと違う感じがなんだか恥ずかしかった。
「竜太、顔真っ赤」
そう言って、周さんは僕の顎を指先でクイっと持ち上げ、軽いキスを何度も続ける。
「……これ、なんか恥ずかしいです」
思わず俯くと、なにを今更と言いながら周さんは笑った。
相変わらず僕にチュッチュしている周さんの頬を両手で押さえる。
「もう! だから伊織が戻ってきちゃうから…… 」
「いや、伊織もうとっくに戻って来てるし……」
周さんはそう言って部屋のドアに目を向けた。
え……?
えぇーーー?
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