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可愛い焼きもち
「なんだよ……お前が緊張してどうすんだ。体固くなってんぞ」
伊織の顔を覗き込むと、真っ赤な顔をして目をそらした。
「ほら、 こうやって話をするだけでもう顔がこんなに至近距離。な? いつでもチュー出来んじゃん」
少し顔を近づけたら、伊織に睨まれてしまった。
「わかったから! マジで何なの?……すげえ恥ずかしいじゃんか! 顔が近いんだよ! もー!」
……?
何だよ!
人がせっかく丁寧に教えてやってんのに……
「伊織なに怒ってんだよ。でも、わかったろ?……好きな奴なら、このくらい近けりゃ自然とキスしたくなるから大丈夫だよ」
伊織を見つめながら俺がそう言っていると、竜太が風呂から戻ってきた。
なんか早くね?
あ……そっか!
俺がいるから早く戻ってきてくれたんだな!
可愛いなぁ、竜太は。
嬉しくなった俺はさっさと伊織から離れ、隣に座った竜太の腰に手を回した。
「竜太、風呂早かったな……どうする? 伊織先行く?」
俺も早く風呂済ませて竜太とイチャつきたい。伊織より先に風呂に行きたかったけど、何故かイラついてる竜太に睨まれてしまった。
「伊織が先に行ってきて!」
竜太にしては珍しく強い口調。
「じゃ、俺先に風呂行ってくるね……周」
伊織はさっきの話の事だろう、照れ臭そうに俺に小さくお礼を言い、いそいそと部屋を出て行った。
竜太はさっきから黙りこくってプリプリしてる。口がとんがってるから何か怒ってるのは間違いない……
もしかしてさぁ、俺と伊織が二人で部屋にいたことに対してヤキモチ妬いてるのかな?
そう思ったらちょっと嬉しくなってきた。
「あれぇ? あれあれぇ?……もしかして竜太、焼きもち妬いて怒ってるの?」
「妬いてません!」
うわっ! わかりやすっ!
竜太……赤くなっちゃって。
「うそうそ! ほら……口とんがってる。伊織と同じ! ふはっ……そっくり!」
なんだよ竜太、可愛すぎるだろ。
伊織とさっきあんな話してたからキスしたくて堪らなかった。
思わず竜太を押し倒すと、嫌だとかやめてとか言いながらも目を潤ませて俺を見る。
「竜太……エロい顔になってるよ」
竜太の弱い耳の後ろを優しく撫でると案の定、色気のこもった息を吐く。
やべ。
これ以上はムリだ……
「周さん……やだ。やめてください………んっ」
やめてくださいとか言って、そんな顔じゃ全然説得力がない。
でも、キスくらいはいいよな?
「なんで嫌だって言うんだよ?……まだキスしてないよ 」
俺がそう言うと、俺の口付けを待つかのように竜太は軽く目を閉じる。
押し倒され、俺の腕の下で可愛く目を瞑る竜太に少し見惚れてから、唇を重ねようと顔を近づけると視線を感じた。
「………… 」
部屋の入り口、ドアのところで忘れ物かな? 困った顔で立ち尽くしている伊織と目が合った。
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