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弟
信じられない! 信じられない!
周さん、伊織がいるの知ってて僕にあんなことしたの? 嘘でしょ?
「竜太君……ごめんね。服、忘れて取りに来た……」
どうしていいのかわからずに固まってしまった僕をよそに、伊織は気まずそうにそう言って、そそくさと部屋から出ていった。
「………… 」
「ちょっと! 周さん? 伊織はいつからいたんですか? ……てか、僕ら男同士なのに……伊織、どう思ったか……」
そう……
僕は伊織に見られていた事の恥ずかしさより、伊織がショックを受けてしまってないかが凄く心配だった。
「いや……伊織の奴、俺らが付き合ってんのは知ってるから。男同士って言ったって別にどうって事ねえんじゃね? あ! でもガキにはあれは刺激が強すぎたか!」
僕の気も知らず、周さんは何だか楽しそうにそう言った。
え?
周さん、今なんて……?
「ねえ! なんで伊織が僕らが付き合ってるってこと知ってるんですか? え? え……? 」
さっきからちょっと混乱してしまって頭が上手く働かない。周さんは周さんで「まあまあ、落ち着けよ」と、ヘラヘラしながら僕の太腿を摩ってる。
もう!
イラっとした僕はその手をピシャリと払うと、もう一度同じ事を周さんに聞いた。
「周さん? なんで伊織は僕らが付き合ってるのを知ってるんですか?……まさか言ったの? 僕に内緒で…… 」
別に話してもいいんだけど、こういうのってデリケートな事だからちゃんと僕にも話して欲しかった。これは嫉妬とかわがままとかそういうんじゃない。
「いやさ、竜太が骨折したとき俺が竜太のココにチューしたの見られてて、そん時聞かれたから話したんだよ」
そう言いながら、周さんは僕の額を人差し指ですりすりと撫ぜた。
言われてその時の状況を思い出す。確かにあの時、周さんは僕の額にキスしてくれた。
「……見られてたの?」
うん、と嬉しそうに笑う周さんがちょっと可愛い。
「その時の竜太の表情がね、伊織には印象的だったみたいだよ」
周さんがそう言って僕の頬にふんわりとキスをした。
「………… 」
だからって……
「だからって、なんで伊織がいるのにあんな事続けたんですか? もう……恥ずかしいじゃないですか!」
僕はジッと見つめる周さんの視線から逃げる。
「俺だって、あんな可愛くてエロい竜太は誰にも見せらんねぇけど……伊織ならまあいいかな? って思っちゃったんだよね。家族……だろ? なんかさ、可愛い弟みたいに思えちゃって」
弟かぁ。
でも!
家族にだって普通は恋人とのラブシーンは見せないよ!
「弟でもなんでも、何で見せてもいいかな……って思ったんですか? それっておかしいでしょ!」
僕がいつまでも怒ってるからか、段々と周さんは慌てたような表情になる。
「だってよ、伊織が……ん……いや、なんでもねぇ……」
何かを言いたそうにしてたけど、結局周さんは何も言わずに黙り込んでしまった。
なんなの? もうっ! 知らないっ!
周さんのバカ!
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