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仲直り

伊織がリビングへ降りて行ってしまってすぐに、周さんがお風呂から部屋へと戻ってきた。 「あれ? 伊織は?……てか、竜太まだ怒ってる?」 周さんはベッドに座る僕の前にペタンと胡座をかいて座る。 そんな顔して下から上目遣いで見ないでよ。 気まずい…… おまけに猛烈に恥ずかしい。 いつもカッコよくセットされてる周さんの明るい色の髪の毛は、濡れて先端から雫が垂れてる。きっと急いで戻ってきたんだろう。 僕は照れ隠しも相まって、周さんの首に掛かってるタオルを取り頭をゴシゴシと拭いてあげた。 「こんなにビショビショで……風邪ひいちゃいますよ」 周さんは目を瞑って、僕にされるがままで黙ってる。 少しの間、僕も何も話さずに周さんの髪を拭いてあげた。 どうしよう……何か言わなきゃ。 そう思った瞬間、周さんの手が僕の手を掴んだ。 「竜太……頭、ありがと……ごめんな。俺、無神経だったよな……」 下から周さんに見つめられ、ドキッとしてしまう。 周さんだって、悪くないんだ。 そもそも僕の焼きもちからこんな雰囲気になってるんだ。 「周さん……ゴメンなさい。伊織から全部聞きました。僕、ちょっと焼きもちです。あと……恥ずかしくて。怒っちゃってゴメンなさい」 周さんは優しく笑って、掴んでいる僕の手の甲に軽くキスをする。 「竜太……可愛いなぁ。俺が悪いんだよ。そりゃ恥ずかしいよな。でも、伊織に竜太ってこんなに可愛いんだぜ……って見せたかったのもあるんだ。だからゴメン」 周さんが僕の顔を覗き込む。 僕は首を振る…… 「あ……それと伊織が変なこと言ってすみません。どうやってキスするかなんて……」 僕は言ってて益々恥ずかしくなった。 「あはは、付き合いたてだからもうヤりたくてしょうがねぇんだよ」 「もうっ! そんな事ないですって。伊織まだ中学生になったばかりですよ?」 少しぽかんとしてから「竜太はマジメか!」って周さんがゲラゲラと笑った。 「……マジメですみません」 そんな笑うことないじゃん…… 僕にはそういう「普通」がよくわからないんだもん。ちょっと悲しくなってしまって俯いたら突然周さんに抱きつかれた。 「ごめんごめんっ! 今のも俺が悪いっ! しょんぼりしないで。笑って悪かった。でさ、さっきの事は……その、許してくれる?」 僕の腰に抱きついたまま、周さんはまた上目遣いで僕に聞く。 「……はい。仲直りしてください」 周さんは嬉しそうに頷いた。 ……そうだよね。僕も僕にしか見せないこの周さんの可愛いはにかみ笑顔、誰かに見せたいって思う事だってあるし。 でも、この可愛い周さんは僕だけのもの。 僕は腰に抱きついてる周さんの頭を撫でながら、髪を退かしてその額にキスをした。 「竜太〜、俺もベッドで一緒に寝てもいい?」 僕に抱きついたままの周さんが甘えた声で言ってくる。 伊織も気を利かせてリビングに行ってくれたし…… いいかな? ……いいよね?

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