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買い物

花見に行く事になったけど、お弁当って作っていった方がいいのかな? 父さんと母さんとお花見した時は、母さんがお弁当を作って桜を見ながら三人で食べたっけ…… 友達同士で花見の時もお弁当広げて食べるもの? 僕はよくわらないから周さんに電話して聞いてみた。 『なに? 竜太弁当作ってくれんのか? ……よし! みんなの分作って来い。ちゃんと材料費取るから……で、修斗と康介には場所取りと飲みもん用意させて、俺は竜太と弁当を運ぶ! それでオーケイ?』 電話口で顔が見えなくても伝わってくる張り切った様子の周さん。凄く喜んでくれてるのがわかって嬉しかった。 「わかりました。頑張って作りますね。よかったら前日買い出し手伝ってくれますか? 僕、周さんと一緒にお買い物したいです」 『おう! 勿論! 買い物行こうぜ。楽しみだなぁ。晴れるといいな』 周さんと買い物に行く約束をして、その事を康介にも伝えておいた。 そう言えば陽介さんは来られるのかな? ふと思い出し、その事もメッセージに送ったらすぐに返事が返ってきた。 陽介さんは、その日は友達に誘われて別の場所でお花見をするらしい。その夜は付き合いで合コンなんだって。 合コン……? 康介に言わせると圭さんが行ってしまってから陽介さんは元気がないから、合コンでも何でもいいから遊びに出かけてくれればいいって……友達と遊んでいれば多少は気が紛れるだろうからって。 そうだよね、やっぱり元気ないんだ、陽介さん。 きっとお花見に圭さんもいれば、お弁当も豪華だろうしもっと楽しいんだろうな…… お花見の前日、僕は周さんと二人で近くのスーパーに来た。周さんがカートを押しながら、食べたいものを考えている。 「俺な、竜太のあの卵焼きが食べたいんだよ。でも凄え旨いからさ、みんなもいっぱい食うだろ?……そしたらさ、俺の分少なくなるじゃん? ……だから、俺用の卵焼き作ってくれよ。俺の分が少なくなんの嫌なんだよ……」 周さんが真剣な顔で僕におねだりしてる。まるで子供みたいだ。あまりにも見た目にそぐわない物言いに、僕は可笑しくて笑ってしまった。 「あ? なに笑ってんだよ? 竜太? わかった? 俺の卵焼き…… 」 「はいはい、大丈夫です。ちゃんと周さんの卵焼きは別に用意しておきますから。……でも内緒ですよ? 特別なんだから。ね? いいですか?」 周さんのはにかみ笑顔がやっぱり可愛い。 「周さん、あとおかずは何がいいですか?……あ、でも簡単なのしか作れないけど」 そう言いながら、本当にちゃんと作れるのか不安になってくる。自分から作るって言ってしまった手前、ちゃんとしたのを作らないと。 「唐揚げだろ? タコさんのウインナーだろ? ……俺は竜太の卵焼きがあればそれで満足だし、何でもいいや」 何でもいいって一番迷うんだけどな。 でもまぁいいや。みんなに喜んでもらえるように頑張ろう。 それにしても、タコさんのウインナーって…… どんだけ可愛い事を言うんだ周さん。可笑しくてしょうがないや。 どうしても笑ってしまう僕を見て、キョトンとしている周さん。 「ん? 竜太、楽しそうだな。俺も竜太の弁当、楽しみだぞ」 周さんはにこにこしてカートを押しながら、僕の頭をワシャワシャと撫でた。 明日はいよいよお花見。楽しみだな──

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