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相談

しばらくすると窓の方でコンコンと音が聞こえ、顔をあげて見てみると修斗さんが僕に向かって手を振っていた。 「あれ? 修斗さん、まだ残ってたんですね」 「うん、ちょっとね……ねぇ、まだ帰んないの? 一緒に帰ろうよ」 もう結構な時間だし、そろそろ帰ろうかな。康介も部活の後はバイトだって言ってたっけ。 「はい、ちょっと待っててもらえますか? すぐ支度して出ますね」 僕は後片付けをして、急いで修斗さんの待つ外に向かった。 「お待たせしました!」 康介がバイトを始めてからというもの、修斗さんと放課後一緒にいることが多くなった。周さんもなんだかんだ言って放課後はバイトの時が多いから…… 「竜太君いつも相手してくれてありがとね。お腹すいちゃった。なんか食べてかない?」 またいつもの調子で二人で喫茶店に寄る。 修斗さんと一緒だと決まってどこかに寄り道をして、誘われるがままお茶と称してスイーツを食べに行くんだ。修斗さんも大概だけど、僕も甘いもの好きだからこういったお誘いは嫌じゃなかった。寧ろ喜んでついて行っているところがあった。 ここも何度か立ち寄ったことのある喫茶店。修斗さんはスフレパンケーキとコーヒー、僕は紅茶を頼んだ。 ここのパンケーキもおいしいんだよね。確か雑誌にも載ってたはず。修斗さんに教えてもらってから、周さんともまた来て一緒に食べたんだ。 「修斗さん、今日は康介サッカー部の助っ人とバイトでいないのわかってたのに何でこんな時間まで残ってたんですか? まさか僕の事待っててくれたわけじゃないですよね?」 部活もしていない修斗さんがあんな時間まで残ってたのが気になったから聞いてみた。 「あ、ちょっとね……一年生に呼ばれてさ、少し話してた」 「………… 」 なんか歯切れの悪い言い方だな…… あ! 「もしかして、修斗さん」 僕は気まずそうに笑う修斗さんに詰め寄った。 「今日はどっちですか? 大丈夫でしたか?」 僕の質問に溜息をつきながら修斗さんはウンウンと頷く。 「……今日はケンカ。周がいないから俺のとこ来たみたい。全く困っちゃうよね」 新学期が始まってから、修斗さんはケンカを売られたり告白されたり忙しいらしい。 腕に自信のある新入生が、周さんや修斗さんが強いって噂を聞いてケンカを売って来るんだ。 そうかと思えば、告白されたり。 良くも悪くも、この二人は目立つから。 だから康介も心配している。 「……康介には内緒ね。お願いね。すぐ怒るんだよあいつ。 修斗さんは喧嘩強いけど油断してヤられる事が多いから……とか言っちゃってさぁ、単純ボンヤリな康介に言われたくないっつうの」 確かに周さんも修斗さんも喧嘩負け知らずで強いけど……でもやっぱり心配だよね。 「それにしてもさぁ、今年の一年はなんかガラの悪いの多いな。まだ入学式終わって一ヶ月も経ってねえのにこの数だもん。面倒くせえの」 パンケーキを口に運びながら、プンプンと不機嫌そうな修斗さん。 体が大きくて目つきの悪い周さんと違って、修斗さんは見た感じそんなに強そうに見えないからなのか、ナメられるって言って怒ってる。 そっか、今年の一年生はガラが悪いのか。 部活見学に来たあの一年生も、そんな奴らのターゲットになってしまってるんだろうか。だからあの時、泣いていたのかな。 やっぱり僕は気になってしょうがなかった。 「どうしたの? ボンヤリしてるよ」 考え込んでしまってぼーっとしていたら、顔を覗き込まれ少し焦る。 でも、情報通な修斗さんに聞いてみてもいいかな? と思って、僕は話を切り出してみた。 「へぇ、お花見の時ね。でもさ、名前もわからないんでしょ? 俺は今のところイジメとかって話は聞いてないなぁ。なんか北中出身の奴と西中出身の奴らがやり合ってんのは聞いたけど…… とりあえずさ、その子が美術部に入ってからでもいいんじゃね? 助けてもらいたい状況なら何かしらSOS発するだろうし。そうじゃなくても竜太君なら気付いてあげられると思うよ。今後彼と関わる事があれば、仲良くしてあげればいいんじゃないかな?」 ……そうだよね。 まだ名前すら知らないし、いきなり僕からそんな事を聞いたところで不愉快だろうし。イジメかも……と思うのだって憶測でしかないんだ。 「そうですよね。修斗さん、ありがとうございます」 僕は少し冷めてしまった紅茶を啜った。

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