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新入部員
部活見学が始まってから一週間──
今日は入部希望者が来るからと言って部長を筆頭に先輩たちが浮き足立っている。
最初に来てくれたあの子達と、その後一週間かけて何人か見学に来てくれた。それが僕らの年より人数が多かったから、きっと入部希望者も多いだろうと言って喜んでいる。
美術部は現在三年生が四人、僕ら二年生が三人……他の文化系の部活と比べると一番人数が少なくて小規模だ。
個人の活動ばかりだから少なくても問題ないけど、それでもやっぱり人数はもう少しいてもいいと思う。
また今年も文化祭に出す作品を考えなくちゃだし……何せ人数が少ないから展示する作品も全員がしっかりと提出しないとサマにならない。昨年は一年生だから無理しないで一作品でもいいよと言って貰えたけど、今年は二作品以上で! なんて言われてしまった。今から考えてないと、のんびりしてる僕はきっと間に合わなくなる。
「新入部員たくさん来てくれるといいですよね」
部室を綺麗にしながら、僕は部長に声をかけた。
「なんか張り切って急いで来ちゃったよ。とりあえずこないだ遅くまで見学していってくれた子は確実だよな?」
嬉しそうな部長に、そうですね……と返事をすると同時にドアが開いた。
「あの……入部希望なんですけど」
「はいはい、どうぞ入って!」
部長、今日はテンションが高い。いつもと全然違う先輩達を見て僕もちょっと楽しくなってしまった。
入口を見ると、そこにはあの時の子ともう一人。
二人の一年生が立っていた。小声で先輩が「二人かよ……」と少し残念そうに呟く。いや、来てくれただけでもありがたいと思わなくっちゃね。
あからさまにガッカリとしている先輩を横目に一年生を部室に招き入れ、僕が纏めて入部届けを受け取った。
新入部員も交えて、まずはみんなで簡単に自己紹介をする。今日は入部希望者が来るということで、美術部員は全員来ていた。基本的に自由に制作活動をしてるので、こういう時や文化祭前くらいしか全員揃うことはない。
一年生からの自己紹介。
あのお花見の時の子は、入江祐飛 と名乗った。
やっぱり、見た感じ大人しそう……喋るとそんなことはなさそうなんだけどね。
一年生は二人とも中学の時は運動部で美術は授業で少しやったくらいの経験しかないらしい。部長が活動内容を簡単に説明した。
「それじゃ、あとは渡瀬君よろしくね。君は一年生担当ね」
急にそう言われて戸惑ってる間に、先輩たちは部長を除いて帰ってしまった。
「あの……僕は 」
どうしたらいいのか困って部長の方を向くと「さっき話した通りだよ」と言って席を立つ。
「わからないことは渡瀬君に聞くように。まずは静物か石膏でデッサンしてみよっか?」
そう言いながら部長は自分の制作に取り掛かってしまった。
「……じゃあ、そういう事で」
僕は戸惑いながら二人に鉛筆と練り消しゴム、スケッチブックを渡し簡単に説明を始めた。
でも人に教えるなんて、僕には無理だ……
なんだかドギマギしてしまう。
「ごめんね、教え方下手くそだけど……とりあえずさっき言ったみたいに自由に描いてみて。そのスケッチブックとかは持ち帰っても大丈夫だからね。じゃあ、僕もそこで描いてるから。何か質問あったらいつでも聞いてください」
僕ももう先輩なんだ。
今更だけど、もう二年生なんだと実感する。
一年生二人は真面目に黙々とデッサンをしているので、途中アドバイスを交えながら僕も二人が終わるまで静かにデッサンを進めた。
部長もいつの間にか帰ってしまっていて、部室で残ってるのは僕らだけ。
あ……そういえば。
今日は周さん、バイトだとは言ってなかったけどもう遅いから帰っちゃったかな。一緒に帰りたかったな。
ぼんやりとそんな事を考えながら窓の外を見ようと視線を向けたら、そこに周さんが立っていて驚いてしまった。
僕と目が合うと嬉しそうにはにかむ周さんに、自然と僕も頬が緩んだ。
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