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帰り道

周さんの事を考えてたら本当にすぐそこにいるんだもん。 嬉しい! いつからそこにいたんだろう…… ぼんやりと周さんのことを考えていたら、いつの間にか窓の向こうに周さんが立っていて、驚いて思わず立ち上がる。 チラッと一年生を見てみると、ほぼ描き終えてるみたいだった。 僕は窓際に移動し、窓を開け外で待つ周さんに話しかけた。 「ちょうどね、周さんの事考えてたんですよ。本当にそこにいるからびっくりしちゃった」 嬉しくてそう話すと、周さんも嬉しそうに笑ってくれた。 「帰れそう? 俺待ってるから……」 そう聞きながら、ちらっと部室の中を覗く周さん。 振り返ると一年生二人が机から顔を上げてこちらを見ていた。 「悪い、邪魔したな」 周さんがちょこっと手を上げると、入江君が小さく「あっ」と呟いたのがわかった。きっとお花見のあの日、ぶつかった人が周さんだと気がついたんだ。周さんは大きいし特徴あるからすぐ分かるよね。 もう一人の一年生が周さんの顔を見てパァッと笑顔を浮かべる。 「なぁ、もしかしてさ、D-ASCH のギターの人? そうですよね? 俺、去年の文化祭見に来たんですよ! ……うわぁ本物だ。俺ファンなんです!」 興奮気味に話しながら僕らのいる窓際に歩いてきた。 「握手! 握手してください!」 「なんだよ、面倒くせえな……」 窓越しに嬉しそうに握手した手をぶんぶんと振っている。 周さん、なんか照れくさそうでちょっと可愛い。 「終わったなら、そろそろ片づけて帰ろうか」 僕は二人にそう言って、自分も道具を片付け始めた。 周さんは下駄箱のとこにいるからと言って先に行ってしまった。 「渡瀬先輩、橘先輩と仲いいんですね。なんか意外。タイプ違いますよね?」 タイプって…… 「タイプってなに? 違ったタイプの人と仲がいいと可笑しいかな?」 そう…… たまに言われるんだよね。周さん達と僕はタイプが違うって。 単純に不思議に思ったからそう聞いただけなんだけど、僕が気分を害したと勘違いしたのか、物凄く謝られてしまった。 「ごめん、別に怒ってないから。ほんと、気にしないで。ごめんね。謝らないで…… 」 なんか聞くんじゃなかった。 少しの間、周さんとどうやって仲良くなったのかとか質問攻め。 うん、ちょっと面倒くさい…… 入江君はそんな僕らに興味を示さず「お先に」と言って帰っていった。 「それじゃ、お疲れ様でした」 最後に僕が戸締りをし、下駄箱へ向かう。 結局入江君は周さんのことに気が付いた様子だったけど何も言ってはこなかった。 「周さん、お待たせしました」 下駄箱に寄りかかり佇んでる姿もカッコいい。周さんは僕に気がつくと優しく笑いかけてくれた。そんな周さんに僕はいまだに胸がキュンとする。好きすぎてどうしようもないね。 「そうだ竜太……ちょっと話したいからどっか寄ってもいいか?」 歩きながら周さんに言われて僕は頷く。 久しぶりに周さんと一緒なのに、まっすぐ家に帰るなんてもったいないよ。 「僕、ちょっとお腹空いちゃいました。どこかで…… 」 「どうせまた甘いもん食いたいんだろ? そこの茶店寄るか?」 「ふふ、そうです。パンケーキ食べたいんです。いいですか?」 「もちろん。 俺にもひと口くれるならいいよ。クリーム乗ってないとこ」 周さん、パンケーキ食べないくせにいっつも僕のをひと口貰うんだよね。 「はい、もちろんいいですよ。でもちょっとだけね」

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