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デートのお誘い

いつもの席に二人で座った。 僕は初めから決めていたスフレパンケーキとカフェオレを頼む。周さんはホットコーヒー。 「ほんと、竜太はこういう時嬉しそうだよな」 周さんが若干呆れたようにそう言って笑う。 「だって嬉しいんですもん。こないだ修斗さんもこれ食べてて、また周さんと来た時に僕も食べようって思ってたんですよ。ちょうどね、それ考えてたら周さんが来てくれたから余計に嬉しくって。僕の考えてたこと伝わってたみたいで嬉しかったんです」 僕はちょっとはしゃいでそう言うと「わかったわかった」と周さんに制された。 「俺は竜太の事ならなんでもお見通しなんだよ」 パンケーキを口に運びながら、視線を感じ周さんの顔を見た。 「?」 「美味しい?……ひと口ちょうだい」 ……えっと。 周さんがぽかんと口を開けて待ってる。 「竜太? 早くちょうだい。クリームのとこはいらねぇよ」 あ、そうか。 他のお客さんが近くにいないから。 僕はちょっと恥ずかしかったけど、ひと口サイズを切り分けると周さんの口へ差し出した。 可笑しいの…… 以前はこういうの全く恥ずかしいなんて思わなかったんだけどな。 付き合いたての頃は何もわからなかった僕でも、今なら分かる。男同士でこういう事をするのはおかしいって偏見の目があるのももう知っている。だからこういうちょっとした事も周りが気になり恥ずかしくなっちゃうんだ。 「周さん、本当に食べるんですね。パンケーキは苦手かと思ってました」 もぐもぐしてから周さんは頷いた。 「うん、あんまりにも竜太が美味そうに食うからさ。竜太の好きなのなら……」 コーヒーを啜り「美味かった」と呟く周さん。そんな周さんを見て、幸せだなってしみじみ思った。 あ! そうだ…… 「周さん、そういえば話があるって……何ですか?」 「あー! そうだっ! 忘れるとこだった。今度の土曜さ、デートしよ! デート!」 休みの日のデートはもう何度もしている。 わざわざ改まって「話がある」なんて言われて聞かされる内容じゃないよね? 「デート……ですか? もちろんいいですけど。なんでまた改まってデートのお誘い?」 単なるデートの約束? 他に大事な話でもあるのかな? 「だってよ、今度のデートは特別……あ! なんでもない。いつものデートだよ。予定、大丈夫だよな? ちょっと早目に出るけど……」 ん? 周さんの様子が変…… また何か隠してるっぽい。 ……でもまあいいか。デートできるのには変わらないし。 「どこに行くか決まってるんですか?」 ちょっと周さんの様子を怪訝に思うも、あまり気にせず話を続けた。 「うん、決まってるよ。俺が竜太んちまで迎えにいくから……あ、夜遅くなるかもだけど大丈夫? どっかその……泊まってもいいんだけど」 周さんに見つめられ、ドキッとする。お泊まりでデートだ! 楽しみすぎる。 「はい。どっちでも……」 あまり浮かれてるのを悟られたくなくて、なるべく平静を装い返事をした。そして「どっちでも」と言った僕を見て周さんが吹き出した。 「どっちでも……ってなんだよ。ま、そん時でいっか。疲れたら泊まってきゃいいし ……な?」 疲れてなくったって、周さんとずっと一緒にいたいに決まってるじゃん。 恥ずかしかったから「どっちでも」なんて言っちゃったけど。 でも、周さんも少し顔が赤い。 「で、どこに行くんですか?」 「ん? ……内緒!」 ふふ…… 何を企んでるのかわからないけど、周さんとデート、楽しみだな。 何着てこうかな。 喫茶店を出て、周さんに送ってもらって家に帰った。 周さんと帰るといつも家まで送ってくれる。その分長く周さんと一緒にいられるから嬉しいんだけど、遠回りさせちゃって悪いなっていつも思う。でもそれを言ったら「俺がそうしたいんだからいいんだ、気にすんな」って…… ほんと優しくて大好き。 「周さん、いつもありがとうございます。じゃあまた明日……」 玄関先で周さんと別れる。 ニコッと笑った周さんが、僕の額にキスをした。 「もうっ、突然なんだから!」 びっくりしていると、悪戯っぽく笑った周さんは「またな!」と手を振り帰って行った。

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