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行き先

約束の日、僕は早目に起きてお気に入りの服を着る。 今日は周さんとデートの日── 時間の約束もあやふやで、朝に迎えに行くと言っていた周さんが何時に来るのかわからなかった。だからいつ周さんが来ても大丈夫なように早くから僕は支度を済ませていた。 それにしても思いのほか周さんの到着が早くてびっくりしちゃった。 「おはよ! 竜太、行くぞ〜」 周さん、今日もカッコいいな。 制服姿じゃない周さんはいつもよりぐっと大人っぽく見えて相変わらずドキドキしてしまう。 朝早い時間で人も疎らないつもの道、駅までの道のりを周さんと二人並んで歩いた。 土曜日の早朝だし、電車はさほど混んではいなかったけど、二人で座るスペースはあいていなかったのでドア付近に並んで立つ。 ドア横の手摺に掴まっていたけど、バランスの悪い僕はちょこちょこふらついていた。そんな僕を見かねて、周さんは僕の体をさりげなく支えてくれる。腰にまわされた周さんの手に緊張しちゃったけど、僕は外の景色を眺めて誤魔化した。 今日はどこに行くのかな……? もう、いい加減聞いてもいいよね? 「周さん? 今日はどこに行くんですか? 随分と電車に乗ってますけど……」 目の前の周さんを見上げるようにして僕が聞くと、少し驚いたような顔をして周さんが口を開く。 「あれ? 言ってなかったっけ?」 「やだなぁ周さん、内緒って言ってたから聞いてませんよ僕」 すると周さんはケタケタと笑って「悪かったな」と僕に謝った。 「遊園地。 遊園地だよ……夢の国!」 なんだか楽しそうな周さん。 「夢の国?……あ! もしかして!」 「そうそう! 有名なネズミのいる夢の国」 「嘘! 僕初めてです! あの男女のネズミが有名なところ!」 周さんの言い方に合わせてそう言うと、ゲラゲラと笑って「大正解!」と僕の肩を叩いた。 「竜太、行ったことねえって思ってさ。いっぱい遊ぼうな」 凄い! 嬉しい! 「はいっ! 楽しみです!」 ちょっと興奮して、周さんのシャツを掴んで返事をしたら、周さんに小さな声で怒られてしまった。 「おい……そんな可愛い顔してくっつくな!」 だって周さんが僕を喜ばせてくれるから…… しょうがないじゃん。 ふふ……行き先聞いたら益々ワクワクしてきちゃった。 楽しみだなぁ。

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