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お揃いで
電車を乗り換え遂に目的地に到着する。
凄い人!
スタスタと入場ゲートへと進んでいく周さんとはぐれないように、慌てて僕はついていった。
「周さん! 凄いですね! 人がたくさんで…… 」
僕が大きな声で周さんに向かって言うと同時に手を掴まれた。
「はぐれたら困るから……」
振り返り僕に笑いかける周さん。僕も掴んでくれた大好きなその大きな手をキュッと握り返した。
中に入ると正面にお城が見える。
テレビで様々な特集を組まれて放送されてるのを何度も見ていた。キラキラしていて、楽しそうで、非日常的な夢の国。
友達もいなかった僕は、凄いなぁとは思いつつもその当時はとくに興味もなかったと思う。
でも今は違う。
楽しい事、素敵なこと、ワクワクする事、全部周さんや友達と体験したい。
だから周さんがここに連れて来てくれたのが凄く嬉しかった。
きっと電車の中から僕のテンションは可笑しかったんだと思う。
ずっと喋りっぱなしな僕に、周さんは少し呆れ顔だった。
「竜太……ちょっと落ち着こうな」
僕と手を繋いだままの周さんが振り返り、クスクスと笑った。
「最初、何に乗ります? ねぇねぇ、周さんっ!」
周さんの歩く後ろをスキップしながら……いや、正確には僕はスキップができないから、スキップしてる気分でついていく。
「いや、最初は買い物に行くよ」
え? 乗り物乗らないの?
「なんて顔してんだよ。たっぷり時間あるんだからさ、そんなに口尖らすなって」
周さんに言われて、僕は慌てて笑顔を作った。
「竜太わかりやすっ 」
「周さんに言われたくないです」
二人で笑いながら近くのショップに入る。
うわぁ……ここも凄い人。
僕は人混みが苦手だ。
でもそれをちゃんと周さんもわかってくれてるから、すかさず僕の横にきて守るように腕を回してくれた。
恥ずかしいやら嬉しいやら。
「あれ? でも周さん、最初にお土産とか買っちゃったら荷物になりますよ」
そうだよ。お土産なんか最後に買わなきゃ。
そう思って周さんに聞くと「違う違う……」と首を振る。
「土産じゃないよ。もう買うの決めてあるから……ほら、こっちだ。あったあった」
人をかき分け奥の棚の方へ進むと、周さんの視線の先には様々な種類のかぶり物が並んでいた。
「これ! どう? 俺似合う?」
おもむろに手にしたのは、ミッキーの耳の付いてるモノトーンなハット。
周さんはそれをスポッと頭にかぶり、僕に聞いた。
「ふふふ、可愛い!」
周さんらしくない言動に、僕は可笑しくてしょうがなかった。
「なんだよ、笑ってんじゃん」
「いや、可笑しいんじゃなくて、周さんらしくなくて……かっこいいのに可愛いから……ふふふ、ダメです、僕楽しくて笑っちゃう!」
口を押さえて笑いを堪えていると、周さんに何かを頭に装着させられた。
「竜太はこれな 」
鏡がないから、僕の頭についてるのがどんなのかわからない。
頭から外して見てみると、耳の付いたカチューシャ……赤と白の水玉リボン付き。
「なんでコレ? せめて男の子のにしてください!」
ゲラゲラと周さんが笑ってる。
「いや、竜太なんでも似合うから! 可愛いぞ」
僕は自分であれこれ試してみて、やっとの事で何にするのかを決めた。
周さんは最初にかぶったミッキーのハット。
そして僕も周さんとお揃いのハットにした。
「お揃いです……見て!」
レジでタグを外してもらい、二人でしっかりかぶって外に出る。
「竜太はあのリボンのカチューシャの方が似合ってたのに……」
少しだけ不満そうな周さんだったけど、僕が周さんと同じのがよかったんだと伝えると嬉しそうに笑ってくれた。
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