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迷子
周さんの服の裾を握り、僕はスタスタと進む周さんのペースに置いてかれないように必死に歩く。
パレード目当ての人達で溢れかえっている広場を横切り、周さんはどんどん先を進んでいく。いったい何処まで行くんだろう……
パレードはパーク内をぐるっと一周、ゆっくりと回るんだって。
キラキラと華やかで綺麗で……前にテレビで見たときは、レポーターの女の子が感動のあまり涙を流していたっけ。
楽しみだな。これから周さんと二人でそれを観るんだ。
「竜太……大丈夫? 思ってたより人が多くてよ、歩きにくいよな。悪りぃ、どうしても向こう側から見たいんだよ。もう少し歩くぞ……うわっ、凄えな本当。クッそ! 人が邪魔!」
振り返って周さんが話してくれるけど、途中からは前を向いてしまって声がよく聞き取れなかった。
うわぁ……
またあそこの人混みの中を抜けるのか。
実は僕、今日はどこへ行くのか聞かされていなかったから新しい靴を履いて来ちゃったんだ。周さんとの一日デート、ちょっとお洒落したいなって思っちゃったから。
行き先が遊園地で、こんなに歩くなんて思ってなかったから……
少しだけ靴擦れ。
ヒリヒリして歩きにくい。
それでも周さんはそんな事わからないからずんずん進んでしまう。だから僕は置いていかれないよう、周さんの服を握った手を離さないように気をつけた。
気をつけていたはずなのに……
きっと一瞬手を離してしまったんだ。
俯き気味で歩いていたから全然気が付かなかった。
歩く足がピタッと止まったから顔を上げると、目の前に見えたのは全く知らない人。その人も僕が服を掴んでるのに気がついて振り返る。
一瞬何が起きたのか理解できなかった。
「君誰? え?? ……何?」
その声で我に返った。
「あ! ごめんなさい! 間違えました!」
僕は慌てて手を離し、その場から離れる。
やだ!
ここどこ?
てか周さんはどこ行っちゃったんだろう。自分がどのくらい一人で歩いてきてしまったのかもわからず、慌てて周りを見渡してみる。背の高い周さんだけど、どんなに目を凝らしてみても見つける事が出来なかった。
おまけにこの人の多さ。
心細い……
怖い……
どうしよう。
周さんとはぐれてしまった。心細さと恐怖からか、靴擦れした足の痛みが増した気がする。痛む足を引きずるようにしてとりあえず人混みを抜けることにした。人混みを抜けた先にちょうどベンチがあったので僕はドキドキする胸を押さえながらそこに腰掛けた。
バッグの中から携帯をとりだす。
そう、電話すればいいんだ……
大丈夫。
パニックになりそうなのを必死に堪え、携帯を見つめる。
大丈夫……
すぐに会えるから。
震える指で画面をタップした。
周さん! 周さん! 出て! 早く……
周さん……
何度もコールしてるのに、周さんは出てくれない。
何で? 周りが騒々しいから電話に気が付かないのかな。
どうしよう。
困ったな。
携帯を握りしめどうしたらいいのか泣きそうになっていると、誰かが僕の横に腰掛けた。慌てて横を見ると、知らない人が僕に微笑んでいる。
「どうしたの? 一人? 連れの彼は?」
心細くてパニックで僕が返事が出来ないでいると、その人は話を続けた。
「僕らさっきも声かけようとしたんだけど、もう一人のお友達に凄い睨まれちゃってさ、声かけそびれちゃったんだよね。どうしたの? 凄い不安そうな顔しちゃって……あれ? もしかしてお友達とはぐれちゃったのかな?」
僕はぺらぺらと喋っているその人の顔を見た。
優しく僕の顔を覗き込んでくる。
「彼の事、一緒に探そうか?」
優しい笑顔を向けられた僕は、心細さと不安から思わず頷く。
いつの間にか一人増え、その人達に挟まれるように僕は立ち上がった。
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