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もう大丈夫

「なんで電話出ねえの? はぐれて心配じゃねえのかよ。まったく……とりあえず竜太君、俺らと一緒にいな」 プリプリ怒ってはいるけど、僕の事を心配して優しく接してくれる恭介さん。手にした携帯を眺めるも、やっぱり周さんからの着信はない。 僕がいなくなったのに気がついてないのかな? ……なんか悲しくなってきた。 「ん? どうした?……春馬待たせてるから行くぞ。おい、竜太君?」 僕がまたはぐれないようにと、恭介さんが手を繋いでくれている。優しく僕を引っ張ってくれるけど、中々足が進まなかった。 悲しくなってきたと同時に、靴擦れしたところの痛みが更に増してきて足がなかなか前に出ないんだ。 「あ……ごめんなさい。ちょっと…… 」 僕が言い終わらないうちに、恭介さんは僕の前にさっと跪き足首を掴む。 「お前、靴擦れか? ……見せてみ」 すぐにベンチに座らされ、靴を脱がされてしまった。 恭介さん、よく気がついたな…… 「うゎ……これ痛いだろ。血ぃ出てるし。まったく……慣れない靴履いてきたのか?」 僕が頷くと、恭介さんは呆れたように溜め息を吐いた。僕にだって言いたいことはよくわかる。でもしょうがないじゃん。 「だってせっかくのデートだし、ちょっとオシャレしたくて新しい靴履いてきちゃったんです……周さん、行き先教えてくれなかったから……」 僕だって、行き先が遊園地だってわかっていたら新しい靴なんか履いてこない。 「まったくお前らは……」 そう呆れたように吐き出した恭介さんは携帯を取り出しどこかにコールした。 「あ、春馬?……ん、ごめん……うん……うん。いやさ、今誰と一緒にいると思う?……そうそう! なんでわかった?……ん、うん…ははっ、だろうな! で、竜太君怪我してっからちょっと戻るの時間かかる……ああ、心配ねえって。周にも言っといて。うん、パレードには間に合うから大丈夫。うん……じゃあまた…」 恭介さんの電話の相手は春馬君だった。もしかして周さんと一緒にいるのかな? ふたりの会話から周さんも一緒にいるらしいことがわかって嬉しくなった。そして電話を切った恭介さんは、満面の笑みで周さんと春馬君が一緒にいる事を教えてくれた。 周さん、僕がいなくなって慌てふためいてたらしい。 でもよかった…… 本当によかった。 ホッとして泣きそうだった。 「とりあえずさ、医務室まで歩くのもしんどいだろ?……ダメもとであそこの売店のキャストに絆創膏もらえるか聞いてくるから。一人で待てるよな? ここにいろよ。変なのに声かけられても無視しろ」 そう言って恭介さんは僕の頭をぽんと軽く叩いて向こうの売店へと走っていってしまった。 また一人…… でももう大丈夫。 もう誰にも声かけられないように、僕は下を向いて恭介さんが戻るのを待った。

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