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竜太の居場所

「なんでまたこういう時に携帯を忘れるかなぁ……竜太君って人混み苦手なんじゃないの? しっかり見てあげてなかったんですか?」 「………… 」 春馬からなぜか説教されてる俺。 「あと、僕らの前に陣取るつもりでいるみたいだけど、その帽子! 周さんただでさえ大きいのにそんなのかぶってたら前見えないからやめてよね。あ……そうだ! 僕らと一緒に見ましょ! ね? それがいい」 そんな事を言いながら徐ろに携帯を取り出す春馬だったけど、突然その携帯が鳴り出して二人で驚く。 「あ……恭からだ。竜太君にかける前にちょっと出ますね…… 」 春馬は俺に説教しながらも竜太に電話をしてくれようとしてたのだとわかりホッとする。俺は恭介と話す春馬の顔をソワソワと見ていた。 「恭、遅いよ。心配してたんですよ……うん、え? もしかして竜太君? うん、だって慌てふためいた周さんが泣きそうな顔してここにいるんだもん……ふふっ……うん……え?? 大丈夫なの? ……うん、わかった。時間かかりそう?……わかった。竜太君ちゃんと連れてきてあげてね。はい」 え? 竜太は恭介と一緒にいるのか?? 電話を切った春馬が、にっこりと笑って竜太は恭介と一緒にいる事を教えてくれた。 よかった……ほんとよかった! 安心して力が抜ける。 「竜太君、なんか怪我してるみたいだからちょっと時間かかるって…… 」 「はぁ? 怪我ってなんだよ! 大丈夫なのか?」 「もう、周さんうるさい! 落ち着いて……大丈夫だから待とう? 恭が一緒なんだし、恭が大丈夫だって言ったら大丈夫なんです! 竜太君きっと電話に出なかった周さんのこと心配してるよ。戻ってきたらちゃんと謝ろうね」 「……うん。わかった」 竜太が見つかって安心は安心なんだけど、なんか落ち着かない…。 早く戻ってこねえかな。 「あ! そうだ! ねぇ、周さん? ちょっとここにいて。場所取っておいてね」 突然何か思いついたのか、一人ご機嫌で春馬はどこかに行ってしまった。 ……つまんねぇなぁ。 急に春馬はどこに行ったんだ? 竜太と恭介が戻った時、今度は春馬がいないんじゃ恭介が心配するんじゃねぇの? 全く…… 早く戻ってこねえかなぁ。 しばらく一人で待っていると、春馬が何かを手に持って戻ってきた。 「………… 」 「ん?……おかえり」 明らかに春馬は機嫌の悪そうな顔をしている。 「春馬、何か買ってきたのか?」 とりあえず不機嫌そうなのは置いといて、春馬が手に持ってるのが気になったから聞いてみた。 「……ん、これ? 竜太君戻ったら一緒に食べようと思って買ってきたの」 ブスッとした顔は変えずに、春馬がそう答える。 「………… 」 なんだかわかんねぇけど、春馬がブスッとしてるし気まずい。 買ってきたスイーツの袋をポンと置いて、とすんと俺の横に座る春馬。 「春馬、どうした?」 俺の横にピッタリと座る春馬の顔を覗き込んで聞いてみた。 「……別に」 「はぁ? 別に……の顔じゃねぇだろ? なんだよどうした?」 口を尖らせてツンと目を合わせようともしない春馬は明らかに機嫌が悪い。こいつも竜太みたいに、怒ってる時口を尖らすんだな…… 面白い。 「なぁ、なんだかわかんねえけど機嫌直せよ。もうじき恭介戻るんだろ? 可愛い顔が台無しだぞ」 少し揶揄うように春馬の頬を両手で挟んでムニムニ抓った。 「ちょっと! やめてよ! ……あっ、やだっ! もう!」 どうにも不機嫌な春馬を笑わすために、俺はしばらくの間頬を抓ったり頭を撫でたりして揶揄った。

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