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パレードが始まる

恭介さんが突然走り出す。 え……? 急にどうしたのかと前方を見ると、人混みの間から周さんと春馬君の姿が見えた。 よかった……周さん……あ、あれ? 「ちょっと! ……何やってんの?」 二人の姿が見えたのはよかったものの、よく見ると周さんが春馬君を抱きしめてるように見える。 ……なんで?? 僕も痛む足も気にせずに恭介さんを追いかけた。 「てめぇ、春馬に何してやがる! 離れろ!」 凄い剣幕で恭介さんが怒って春馬君から周さんを引き離した。 でも周さんは何故かゲラゲラと笑うばかり…… 「周さん……酷いよ……なんで?」 なんで春馬君を抱きしめてたの? 「は? おい! 竜太が泣きそうになってんだろうが! 恭介、何やってんだよ! ふざけんな!」 「………… 」 さっきまで笑っていた周さんが僕を見て怒り出した。 なんなの? わけわかんない! 周さんと恭介さんが今にも喧嘩を始めちゃいそうなのを春馬君が慌てて止めている。 「やめてよ! ふたりとも、まわりに迷惑! 静かにしてよ」 「いや、そもそも春馬がブスくれてっからいけねぇんだろ? 俺はお前の機嫌をなおそうとしてだな……」 「機嫌悪くないから! 周さん余計な事言うなよ!」 今度は周さんと春馬君が喧嘩になってる。 「ちょっとみんなやめてよ! ……周さん、なんで春馬君の事抱きしめてたんですか?」 この状況、わけわからなくて理解不能…… 僕は周さんにしがみついて顔を覗き込んでそう聞くと、キョトンとした顔をして黙ってしまった。 「周さん?」 すると、プッと吹き出して笑い出す。 「抱きしめてなんかいねえよ? 不貞腐れてる春馬の頭を抱えてグリグリしてただけだぞ。頬っぺた抓ったりくすぐったりして機嫌直させてた」 ……何それ。 そんな事されたら余計にイラっとしそうだけど。 「竜太君ごめんね、周さんがバカやって誤解させちゃったね」 春馬君が僕に優しくそう言うと、今度は恭介さんが不貞腐れてる。 「春馬なにしてんの? 何で機嫌悪くなってんの? 俺、そんなに遅かった?」 あぁ、ややこしい…… とりあえず僕は周さんに後ろから抱きしめられ、落ち着いている。 急に赤い顔をしてしどろもどろな春馬君を、僕は周さんと二人で黙って見ていた。 「怒ってないよ……僕、さっきこれ買いに行ったとき竜太君と恭が手をつないで楽しそうにショップに入ってくとこ見ちゃって……それでちょっと……ちょっとだけ嫌だなって思っただけだから」 歯切れ悪くそっぽを向いてそう話す春馬君。 あ…… もしかしてさっきの買い物の様子を見て、嫌な思いさせちゃったのかも。 「竜太、恭介と手ぇ繋いでたって……」 すかさず周さんが僕を睨む。 「ちょっと周さんは黙ってて!…… 春馬君ごめんね。僕、靴擦れしちゃって恭介さんに助けてもらってたんだよ。手を繋いでたっていうか、僕がもたもたしてたから急いで戻れるように引っ張ってもらってた……って感じだから。あとね、これ…… 」 僕が言い終わる前に、にこにこ顔の恭介さんがさっき買ってきたミッキーの耳のついたカチューシャを取り出し春馬君につけた。 「これ! 竜太君と一緒に選んでた。うん、春馬似合う似合う。可愛い」 キョトンとした春馬君の肩をグッと抱き寄せ恭介さんが微笑んだ。 真っ赤な顔で、春馬君は恭介さんに「なんで僕だけ? 恭はないの?」と怒るも、俺はそんなもん恥ずかしくてつけらんねえなんて言われてしまいワナワナしていた。 合流してバタバタしてるうちにパレードが始まった。 辺りもすっかり暗くなり、遠くの方からキラキラと賑やかにパレードが近づいてくる。 お互いに誤解も解け、僕らはこれから始まるパレードに期待を膨らませた。 うわぁ、いよいよだ…… 僕はワクワクしながら、背後から体に回されている周さんの手をキュッと握った。

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