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記念日
「周さん……起きてください。周さん……」
熟睡してしまってる周さんを優しく揺さぶる。
「………… 」
周さん、全然起きない。
でも気持ちよさそうに眠っている寝顔が可愛い。
「周さんっ! 起きて! 周さん……もうすぐついちゃいますって……」
僕はさっきより少しだけ強めに周さんを揺さぶると、やっと眠そうに目をこすりながら起きてくれた。
「あ……悪い、俺寝てた?」
「ふふ。寝てた? って、ずうっと爆睡でしたよ」
周さんと電車を降り、並んで歩く。
「今日は楽しかったですね! 恭介さんたちとも会えたし、また行きましょうね」
僕は嬉しくて周さんにくっついて歩いた。
「そうだな……竜太、これからケーキでも食べに行くか? 腹も減ったし飯にしようぜ」
「ケーキ? うん! どこ行きます?」
周さんから甘いもののお誘いがちょっと珍しくて気分が上がる。この辺りだとどこのお店がいいかな?と周さんにも聞いてみた。すると「店はもう決まってるから…」と言われてしまった。
「もう予約してある」
え……そうなの?
今日のデートは周さんが何から何まで手配してくれていて驚いた。
「お昼のレストランといい、周さん今日はどうしちゃったんですか? 僕、凄い嬉しいです」
思わず素直にそう言うと「だからさ……」と周さんはちょっと呆れたように小さくため息を吐いた。
「だから、さっきも言ったろ? その……竜太と俺、付き合って一年になるから……記念にさ、しっかりと心に残るようなデートにしたいなって。そう思ったらこうなっただけだ……」
今度は恥ずかしそうにそう答える周さん。
嘘みたい……!
周さんがそんなロマンティックな事を顔赤くして話してる。
「周さん! 嬉しいです! ……記念日ですね!」
僕は興奮してそう言ったものの、記念日なんてそんな事ちっとも考えていなかった……
「あの、ごめんなさい。僕、全然そういうの気がつかなくて……」
いっつも僕はしてもらうばっかりでダメダメだ。
「いや、いいんだ。俺だってなんとなしに思っただけだから。一周年っつったって、正確な日にちまでは分からねえし。まぁだいたい一年経ったな……って思っただけだからよ。別に指折り数えて日付を見ていたわけじゃねぇし。だから謝んな」
周さんは優しくいつものように僕の頭を撫でる。
大きくて優しい手……
「ありがとうございます」
僕はその手に手を添えて、少しの間だけ周さんと手を繋いで歩いた。
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