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これから先のこと…
周さんが連れてきてくれたお店は、カジュアルな雰囲気のフレンチのお店だった。
店内に入り予約した旨を伝えると、一番奥のテーブルへと案内される。
「ここのケーキが美味いってお袋が教えてくれたんだ。竜太が喜ぶかなって思って……」
うん、知ってる。
ここ、前にテレビで紹介されてたもん。ここのデザート一度食べてみたいなって思ってたんだ。
「周さん、ありがとう」
今日は一日中嬉しいことがいっぱいで、顔がにやけっぱなしだ。
周さんも今日は沢山笑って沢山手を繋いでくれた。
いつもなら恥ずかしがってあまりくっつかないのに……
「周さん、僕ね……凄く嬉しいです。幸せです……」
ありきたりな事しか言えなくて、もどかしい。
でも周さんもきっとそんな僕の気持ちはわかってくれてると思うから。
大好きでたまらない周さんの顔をジッと見つめた。
「……照れるから、あんま見んなよ」
視線を泳がせ、頭を指で掻く周さん。思わずクスッと笑ってしまった。
美味しい食事、大好きな人とニ人。
パレードを見ながら、周さんが囁いてくれた言葉を思い返す。
『竜太……俺たち、出会って付き合い始めてそろそろ一年になるな。こんな俺と付き合ってくれて本当ありがとう……これからもずっと一緒にいてくれ』
あっという間の一年だった。
周さんとの初めての出会いが、本当についこの間のよう……
ずっと一緒に……
「………… 」
でも……
周さんはもう三年生だ。
高校を卒業したらどうなるんだろう。
圭さんと陽介さんは、卒業して離れ離れになってしまった。
康介が言うには、やっぱり陽介さんは少し塞ぎこんでるみたいだった。
周さんのいない高校生活。
考えられない……なんだか寂しい。
それに僕だって、もう半年もすれば進路の事を考えて行動しなくちゃいけないだろうし、周さんとこうやって何も気にせずに一緒にいられるのも今だけなのかな……
「………… 」
「竜太?……どうした? 口に合わなかった?」
周さんに声をかけられ、我にかえる。
あ……嫌だ。
僕ってば、また一人で悶々と考え込んでた。
「ごめんなさい。美味しいです! ……ちょっとボーッとしちゃいました」
料理は最高に美味しくて、後から運ばれてきたデザートもお腹いっぱいで食べられないって言う周さんの分まで僕は美味しく頂いた。
僕の食べっぷりに周さんも嬉しそうに笑ってくれて、喜んでくれてよかったと満足そうに微笑む。
そんな幸せな空間のはずなのに、さっき頭に浮かんでしまったこの先の事がどうしても纏わり付いて離れず、僕の心に寂しさが渦巻いてしまう。
……バカなのはわかってる。今こんな事を考えたってしょうがないんだ。
食事を終えて、僕らはまた街に出た。
道を歩きながら、周さんに顔を覗かれる。
「 …?」
「竜太、なんか元気ない……疲れちゃった?」
「……はい。ちょっと疲れちゃった……かも」
疲れてはいないけど、こんな事で周さんに心配かけたくないから。ていうか、こんな事考えたってしょうがないって呆れられちゃう。
「ごめんな、朝からずっと遊びっぱなしだったもんな。足も……痛いよな」
あ、違う……
「いや! 足、大丈夫です! ごめんなさい周さん。僕……なんでもないです」
慌てて否定した僕に呆れたようにフッと笑い、周さんが肩を抱いてくれた。
周りにはもう誰もいない。
「早くホテル行ってゆっくり休もう…」
ジッと周さんに見つめられ、僕は黙って頷いた。
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