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過去への嫉妬と今ある幸せ
ゆっくりとゆっくりと周さんで満たされていく……
ギュッと抱きしめられ、愛してる、大好き……と甘く甘く囁いてもらい、僕もお返しとばかりに周さんにしがみついた。
気持ちが良くて、心も身体も温かい気持ちが溢れてくる。
周さんと出会う前はこんな感情があるなんて知りもしなかった。
一年前、僕は初めてキスをして……
初めて他人に身体を触られ……
周さんにリードしてもらいながらエッチな事も沢山出来るようになった。
今でも恥ずかしいけど、でも時には自分からお強請りまでするようになってしまった。
周さんは僕と出会う前は誰か僕の知らない人とこうやって愛し合ったんだろうか……
なんかやだな。
……やだ。
「やだっ……周さん……んっ……やだ……やっ………グズっ……うゔっ……」
また不安な気持ちが溢れ出し、どうしようもなく涙が溢れてしまった。
今度は薄汚い嫉妬心──
なんだよ、こんな時に僕のバカ……
「あ?? 竜太どうした?……おい、なんで泣いてる? 痛かったか? 大丈夫か?」
僕を見て慌てた周さんは僕から抜け出ようと腰をひく。
「やだっ!……抜かないで……周さん……なんでもないから……気持ち良くして……んんっ」
僕は周さんにしがみ付き、強請るように必死に腰を揺らした。
「……ほんとどうした? 竜太ちょっと今日変だぞ……」
そう言いながらも、僕の言う通りにゆっくりと腰を突いて気持ちいいところを擦ってくれる周さん。
「あ……ん……気持ちい……周さん? ……僕のこと……好き? 僕だけ……好き? ……んっ……あぁ、好きっ……周さん……好き……」
少しだけ訝しげな表情をして、周さんは僕に口付ける。
徐々に激しく僕の中を突き上げながら、口内も舌で激しく舐る。
少し息苦しく感じる長い長いキス……
それがまるで「黙れ」と言われているようでまた涙が溢れた。
激しく突き上げられ、唇を重ね舌を絡めながら僕自身も周さんに荒々しく扱かれ、あっという間に熱を吐き出す。ズルりと周さん自身も僕から出ていき、すぐそこに丸まっていたタオルで僕の身体を拭いてくれた。
「………… 」
「竜太……何がそんなに不安なんだよ。急にどうした? 今日は何かおかしいぞ……」
グズグズと泣く僕の頭を優しく撫でながら、頬にキスをしてくれる。
不安……なのかよくわからない。
周さんが僕のことを大切に思ってくれてるのはちゃんとわかってる。
ちゃんと伝わってくる。
「不安……なんじゃないです。周さんが……僕と付き合う前、こうやって僕の知らない人を抱きしめてたんだって思ったら……たまらなく嫌で……悲しくて……」
自分で言ってて嫌になる。わかってるんだ。こんな事言ったってしょうがないって事。
「もう、バカっ!……そんな事今言われても俺にはどうしようもねーじゃんか。俺の過去に嫉妬してくれてんの? 大丈夫だよ……俺、こんなに相手を愛おしく思ったのは竜太が初めてだから。安心しろ!」
僕が言い終わる前に周さんに怒鳴られた。
バカって……
でもそうだ。バカなんだ僕。
「ごめんなさい」
「そりゃ他の奴と付き合った事あるけどよ、俺ちゃんと好きじゃなかったんだよな。竜太だけだよ、愛おしくて大切にしたい、いろんな事してやりたい……ずっと一緒にさ、死ぬまで一緒に竜太と生きていきたいって、そう思えたのはお前が初めて」
「………… 」
「だからさ、心配すんなよ。誕生日だって毎年一緒に祝ってくれんだろ? 約束したよな? ずっと一緒にいてくれるんだろ? 俺の事信じて……あ! ほら、もう泣くなってば。ごめんな、大きな声出して。やだもう! 竜太が悲しい顔してんの俺耐えらんね」
今度は嬉しくて嬉しくて涙を手で拭っていると、困った顔をした周さんにギュッと抱きしめられた。
「なんで泣くの? 竜太笑ってよ。俺、さっき軽くプロポーズっぽい事言ったんだけど、気付かなかった?」
照れ笑いを浮かべた周さんに顔を覗き込まれる。
……そんなの気付いたに決まってるじゃん。
「周さんのバカ。嬉しくて泣いてるんです! もう……バカっ!」
僕は周さんの胸に顔を埋めた。
「周さん、今日はごめんなさい。僕ちょっとおかしかったですね……」
「うん……気にすんな。少しは俺の事信じてくれるよな? 大丈夫だよな?」
周さんが僕の額にキスを落とす。
「はい。信じてます」
そう返事をして、僕も周さんに抱きつきキスをした。
周さんが計画してくれた一周年の記念日デート。周さんの確かな愛情をしっかりと感じる事が出来て、僕は幸せ。
なんで急にこんなにネガティヴな事ばかり考えちゃったんだろう。
……もう大丈夫だよね?
ありがとう、周さん。
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