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一緒にどう?
「最近よく一緒になるねぇ。どうする? また甘いもん行っちゃう?」
やっぱり……
ご機嫌な修斗さんにお茶に誘われてしまった。
「今日はパンケーキじゃなくて駅前に新しくできたケーキ屋さん行ってみませんか?」
僕は前々から気になっていたケーキ屋の話をしてみた。勿論修斗さんはノリノリで「それいいね!」と笑う。修斗さんもスイーツ好きだし新しい物好き。だからこういう時、誰よりも喜んでくれるから僕も嬉しい。
「あそこの店のね、チョコレートケーキがかなり美味いらしいよ!」
修斗さんはチョコレートが大好きなんだよね。
修斗さん、バレンタインの康介への高級チョコレート、自分で食べちゃうくらいチョコ好きだって……康介がバレンタインの話をしてくれた時は可笑しくて笑いが止まらなかった。
そんな事を思い出していると突然修斗さんが足を止めた。
急に立ち止まるもんだから、僕は修斗さんの背中にぶつかりそうになってよろめいてしまった。
「……っぶない。どうしたんですか?」
僕はひと呼吸おいて修斗さんに聞きながら前方を見る。ちょうど門のすぐ後ろくらいのところで男子生徒が揉めているように見えた。
一人はうちの高校の制服を着ていて、向かい合ってるもう一人は私服……
「 あ!」
「知り合い?」
制服を着てる方が入江君だとすぐにわかった。
「ん? あれはお友達……って感じでもなさそうだねぇ」
修斗さんが呟く。
「あの制服の方、美術部の一年生です。入江君……前に話した……お花見の時の……」
揉めてるようにも見えるし、どうしよう……これは助けてあげた方がいいよね?
僕がどうしたらいいのか戸惑っていると、修斗さんはスタスタと入江君の方へと歩いて行ってしまう。
「あ! 待って…… 」
僕も慌てて修斗さんを追った。
修斗さんはにこやかな表情のまま、入江君ともう一人の間に入り込み、入江君の肩に手を置いた。
「ごめんな、待たせた? 入江君行こうぜ」
僕も入江君も修斗さんの言葉にキョトンとしてしまった。それでも修斗さんは御構い無しに話を続けた。
「あれ? お友達も一緒に来る? 俺は別に構わないけど……どうする?」
入江君と一緒にいた私服の男は「いや別に……」とボソりと呟きそそくさと行ってしまった。
「……さてっと、どうする? 本当に俺ら駅前のケーキ屋さん行くんだけど、一緒に来る?……ってか、一緒に行こう! 決まりね 」
修斗さんは屈託無く笑いながら入江君にそう言った。入江君は困ったような顔で僕と修斗さんの顔を交互に見る。
「入江君? こちら谷中先輩。よかったら一緒に行こうよ」
半ば強引な気もしなくもないけど、入江君は困った顔をしつつもついて来るので、三人で目的のケーキ屋へ向かった。
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