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心強い
「ところでさ、さっき一緒にいたのって友達?」
チョコレートケーキを口に運びながら、修斗さんが入江君に聞いた。
「……はい」
少しの間があってからの返事。僕には友達には見えなかったけど、本当かな?
「そうだったの? なんか揉めてるみたいだったから声かけちゃったんだけど……勝手してごめんね」
謝る修斗さんに、入江君は力なく首を振った。
「いいんです……確かに揉めてましたから。助かりました……」
目線も上げずに小さな声でそう言うと、「ご馳走様でした」と言いながら入江君は席を立つ。
「なに? もう行っちゃうの?」
「はい。ありがとうございました」
修斗さんは特に引きとめることなく、関心なさそうにヒラヒラと手を振り「入江君、またね」と声をかける。そんな明るい修斗さんの声に、入江君はニコッと笑顔を見せて、店を出て行った。
「なんだろうねぇ、ちょっと気になっちゃうね」
ケーキを食べ終え、コーヒーのカップを口につけた修斗さんが僕を見て呟いた。
「私服の奴さ、見かけない顔だったしきっと他校だよね。学校まで来るくらいだからまた来そうだね……」
でも友達だって言っていた。
「入江君、美術部だよね。俺もせっかく知り合った事だし、あいつ嫌いじゃないから気にかけとくよ。竜太君も何かあったら言ってね」
修斗さんにそう言われ、入江君のことが心配だった僕は心強く思った。
それからしばらくニ人でお喋りをして、僕らは別れ家に帰った。
部屋に入り、ベッドに横になりながら携帯を弄る。周さんからの連絡は来ていない。
まだバイト中かな?
僕は周さんにさっきまでの出来事をメッセージで送っておいた。多分送信してから五分と経ってないと思う……ベッドでゴロゴロ寛いでると急に頭上の携帯が鳴って、慌てて出ると周さんだった。
「周さん、お疲れ様です」
浮かれて電話に出ると、ちょっと怖そうな声で周さんが話し出した。
『なぁ、さっきバイト終わって帰ろうとしたらさ、うちの制服の奴が絡まれてっから助けたんだよ。多分そいつ、その入江とかいう奴だと思う。なんかいつの間にかどっか行っちまったからよく顔見てないんだけどよ。美術部の一年だったぞ』
え?……どういうこと? 入江君、あの後また誰かと揉めてたの?
「ありがとうございます。あの、本当に入江君だったんですか? 相手、学校に来ていた人と同じ人かな……」
『どうだろうな、でも腕掴まれて引きずられそうになっててどう見ても嫌そうだったからぶん殴ったんだけど。気づいたら入江どっか行ってるし。明日会ったら文句言わねえと……』
周さん、怒った風に言ってるけど、本当に怒ってるわけじゃなくて心配してくれてるんだってわかる。
「ありがとうございます。周さんは大丈夫でしたか? ……怪我とかしてない?」
ぶん殴ったなんて聞いて、周さんの手が心配になってしまった。
以前僕のせいで暴れて人を殴った周さんの拳も、血が出るほど怪我をしていたのを思い出したから……
『は? なんともねえよ。相手弱そうだったし本気出す必要なかったから……竜太俺の事心配してくれてんの? ありがとな』
周さんがはにかんでる顔が目に浮かんで、僕も自然と顔が綻ぶ。
「僕……周さんに会いたくなっちゃった。早く会いたいな。明日は学校来ますよね?」
早く周さんの顔が見たい。
『もう! 竜太が可愛いこと言うから〜!……ちょっと勃っちゃったじゃんか』
へ? なんで?
「信じらんない! 会いたいって言っただけですよ? 僕そんなつもりで言ったんじゃありませんから!」
可笑しくて笑ってしまった。
「周さん……大好き。おやすみなさい……また明日ね 」
『ゔっ……もう、竜太可愛い……俺も大好き、愛してるよ。おやすみ』
周さんとの電話を切り、しばらく僕はにやにやしながらベッドの上を転がった。
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