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友達

「おっはよ! 竜、昨日も修斗さんとお茶して帰ったんだって?」 朝から元気な康介に呼び止められた。 「康介おはよ。うん、駅前のケーキ屋さん行ってきたの。美味しかったよ。今度康介とニ人で行くって修斗さん言ってたよ」 「そ……そうなの? いや、俺甘いもんそんなに食わねえし……あ、でも修斗さんがそう言ってるなら……いいかな、行ってあげても」 ちょっとだけ顔を赤らめる康介。嬉しいくせにいっつもこうやって照れ隠しをしちゃうんだよね。 「ふふっ、よかったね、康介」 「べ、別に……うん、嬉しい」 素直なんだかそうじゃないんだか。 「康介バイトばっかで遊んでくれないって修斗さん寂しがってたよ……あ! 康介わかりやすい」 しまいには耳まで真っ赤にした康介が「後で修斗さんところに行くからっ」と言って嬉しそうに笑うと隣の教室へ入っていった。 放課後僕は部室へ向かう。 別に今日は帰ってもよかったんだけど、昨日の事もあったから気になって部活に出ることにした。 部室へ入ると入江君の姿はなく、先輩数人ともう一人の一年生、工藤君しかいなかった。 「工藤君、今日は入江君は?」 確か工藤君と入江君は同じクラスだったはず…… 「あ、今日は祐飛は休みです。珍しいよな〜、風邪かな?」 え……休み? でも昨日は周さんが助けたって言ってたから大丈夫だよね? 心配。 「ねぇ工藤君、入江君ってどんな子?」 思わず僕は工藤君に聞いてしまった。 「へ? どんな子って……何でですか?」 藪から棒に聞いたからか、工藤君は不思議そうな顔をする。 「あ……昨日たまたまね、入江君とちょっとお茶して……」 「へ? マジっすか? ずるい! 俺も行きたかった! もしかして橘先輩も一緒に?」 あぁ……そうだった。 工藤君、D-ASCHのファンだった。 「いや……昨日は修斗さんと一緒に…… 」 「えー? 修斗さんってあの修斗さん? なんだよ! 先輩っ! 俺も今度連れてって下さい! ね? ね!」 グイグイくる工藤君に僕はちょっと尻込みする。 ……言うんじゃなかった。面倒臭い。 「うん……今度ね。で、入江君、元気なかったように見えたからちょっと心配でさ。それでどんな子かな? って思って聞いてみたんだけど」 工藤君は、なるほど……といった顔をして話してくれた。 「祐飛とは俺、小学校から一緒なんですよ。小学校の頃はめちゃくちゃ勉強できて優等生。それでいて気さくでスポーツマンだからとにかく人気者だったんです。モテてたし。でも中学上がってからはなんか暗くなったっていうか、付き合い悪くなったっていうか……勉強もある時から全然しなくなってガラッと雰囲気変わっちまったんですよね。小学校の頃は仲よかったんだけどな〜。何で変わっちまったのかはわからないや」 ………。 「もしかして、イジメ……とかかな?」 工藤君は首を傾げる。 「いやぁそれはどうかな?……ないと思いますよ。あ、でも付き合ってた奴らがちょっとガラ悪かったな。そいつらの影響かな?」 そうなんだ。何があったのかな。昨日のあの人は友達だって言ってたけど、入江君は嫌そうにしてたよね。ガラ悪そうには見えなかったけど…… やっぱり気になる。 余計なお世話かもしれないけど。 「俺ね、祐飛が美術部に入るって聞いて一緒に入ることにしたんです。あいつ高校入っても一人でいることが多いし……でもガキの頃仲よかったし、いい奴なの知ってるからさ、なんか気になっちゃって。教室でもなるだけ話しかけるようにしてるんだけど、どうにもつれないんですよね……」 ははは……って少し笑って、なんだか寂しそうな顔をする工藤君。 「工藤君、優しいんだね。近くにこうやって気にかけてくれてる人がいるのがわかって、僕安心したよ」 僕がそう言うと、工藤君はハッとして顔を上げた。 「あ! 俺ペラペラあいつの事勝手に喋って……あの、今言った事内緒です。言わないでくださいね」 僕は「もちろん」と頷いた。

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