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下校
しばらくすると窓の外に周さんの姿。
「おい、竜太帰れる?」
窓枠に手をかけ、こちらに身を乗り出して周さんが笑いかける。 周さんに気付いた工藤君は僕よりも先に周さんのいる窓へ駆けつけた。
「橘先輩! 俺も! 俺も一緒に…… 」
「は? やだよ。俺は竜太と帰るんだよ」
「………… 」
周さんったら……
「えぇー! お茶して帰りましょうよ」
工藤くんはそんな不躾な周さんにも挫ける様子もなく笑ってるからホッとした。
「何でお前とお茶しなきゃなんねぇんだ……あ! そうだ、入江は? 入江はどうした?」
思い出したように周さんがそう言うと、工藤君は怪訝な顔で周さんを見る。
「え、祐飛今日休みです。なんで橘先輩も祐飛のことを?」
首を傾げる工藤くんに、周さんは昨日の話を喋ってしまった。僕は内緒にしておいてあげたほうがよかったんじゃないかな……と思ったけどもう遅い。でもしょうがないか。
「橘先輩……祐飛助けてくれてありがとうございます。なんだよあいつ……大丈夫なのか?」
工藤君もずっと気にしてくれてたから心配になっちゃったみたい。そりゃそうだよね。
「大丈夫だよ。また見かけたら俺が助けるし」
周さんが当たり前だといった顔をして工藤君にそう話した。
「あは、橘先輩がいるなら頼もしいや。じゃあはい、渡瀬先輩もお茶行きましょ、俺もケーキ食いたい」
工藤君は周さんとお茶して帰るのは諦めていなかったらしく、しつこく誘う。僕に言えば何とかなるだろうと踏んでそう言ったみたいだけど、ごめんね……二日連続ケーキはちょっと僕も嫌かな。
「僕、昨日ケーキ食べたから今日はいい。周さんと帰るから……」
今日は久々に周さんと二人でいたい。工藤くんには悪いけど僕も断ってしまった。横で項垂れてる工藤君に「ごめんね」と謝ってから、僕は周さんの待つ外へと急いだ。
「なんだよ、あいつ休んでんのか……なんでもなけゃいいけどな」
周さんと並んで歩く。
「昨日はどんな様子だったんですか?」
僕が聞くと、周さんは軽く首をかしげた。
「いや、なんか知り合いって言えば知り合いみたいだったけど……腕掴まれて嫌そうにしてたからよ〜、声かけたんだよ」
昨日の様子を思い出すようにゆっくりと喋る。
「そしたらよ、そいつら逃げようとしたから軽くぶん殴っといた。だって腕掴まれてんの竜太の部活の奴だってわかったから……そしたら気付いたらそいつもういねえんだもん。ムカつくよな」
周さんは口を尖らせてちょっと不愉快そうな顔をした。
「明日部活で入江君来たら、周さんにちゃんとお礼言うように言っておきますね」
僕がそう言うと「うん」と頷く。
「でも! 周さんもすぐに暴力ダメですよ。僕心配です…… 」
「……そうだな。ごめんな」
笑顔で僕を見る周さんのシャツの裾を、僕はキュッと握った。
周さんはお喋りしながら家まで送ってくれて、結局母さんに捕まってしまいしばらく僕の家でお茶を飲み帰っていった。
母さんも周さんの事が大好きなんだよね。
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