60 / 377
心配
みんなで食事をしているとすぐに康介も到着して合流した。
「……なんで俺の大盛り?」
康介は修斗さんに頼んだ自分のカレーが大盛りなのに気がついて怪訝な顔をしている。普通盛りで良かったのに……とぶつぶつ言っていたけど、修斗さんが「俺も食べたいから!」と嬉しそうに康介に話すのを聞いて、ヘラっとした笑顔を見せた。
いそいそと取り皿に修斗さんの分のカレーを取り分けてる康介を入江君がジッと見ている。
「てか……君誰??」
今頃入江君の存在に気が付いたのか、不思議そうな顔で康介が聞いた。
「あ、一年の入江祐飛っていいます」
「入江君ね、僕と同じ美術部なの」
ぽかんと口を開けた康介が「ふぅん…」とあまり興味がなさそうに返事をした。
「こいつ変なのにいつも絡まれてっからさ、康介も気にしてやってくれ」
周さんが康介にそう言ってハンバーグを頬張ると、入江君は申し訳なさそうに頭を下げた。
修斗さんが康介に自分のグラタンを食べさせようと、スプーンを康介の口へと持っていく。そして真っ赤な顔で康介が抵抗して、またいつものように攻防戦が始まった。
お約束のように修斗さんのスプーンが康介の頬にペチペチ当たる。大体調子に乗った修斗さんに強く言えない康介が折れて収まりつくのだけど、今日は入江君がいるからかいつも以上に康介は抵抗を見せていてちょっと可笑しい。そんないつもの光景に微笑ましく思っていたら、周さんが入江君に声をかけた。
「お前さ、食べ物も喉通らないくらい悩んでんだろ? どうしたんだ? あの時の奴らなんだろ?」
何で俺に話さないんだと言わんばかりに周さんが睨んでる。周さんはいいんだか悪いんだか、いつも思ったことをストレートに口に出す。このはっきりした態度が入江君の事を心配してるんだという事がここにいるみんなにもよくわかった。
「………… 」
入江君、みんなに迷惑かけるからってきっと言わないんだ……
「ねぇ、入江君は中学どこ出身なの?」
唐突に修斗さんがデザートのチョコレートケーキを頬張りながら入江君に聞いた。
「……西中です」
「ふぅん、そうなんだ……周もキツイ言い方すんなよ。誰だって言いたくないことだってあるんだから。でも、みんな心配してんだからな。これも何かの縁なんだし、俺らお前のこと助けるよ」
康介だけ、なんの話? と不思議そうにしているけど、周さんも修斗さんも真剣な顔で入江君に話をした。
「……ありがとうございます」
入江君は一言だけ、お礼を言うとオレンジジュースを飲み干した。
「入江君、みんなに迷惑かけるからって気にしてるみたいだけど……大丈夫だからね」
やっぱり話す気は無いのかな? 話しちゃっても大丈夫なのに。
「なんだよそれ。もう関わってる時点で迷惑なんだっつーの。そんなの気にしてんのかよ。俺はウダウダされるより早くスッキリさせてえんだけど」
「周さんっ! 言い方!」
僕は周さんがちょっと言い過ぎだと思って、慌てて止めようとした。
「だってよ、こいつがなんかトラブル抱えてんの一目瞭然なのに何も言わねぇのがダメなんじゃん!……それにこんなに竜太が気にしてんのによ…… 」
周さんは僕の事も心配してくれてるんだ。
「………… 」
あ、電話──
入江君の携帯の着信音がちょっとの沈黙を破った。
画面を見て慌てて電話に出た入江君は、ぺこりと頭を下げお手洗いの方へと行ってしまった。
「……話してくれない事には助けようがないからね。でもちょっと色々調べてみるよ」
そう言いながら、修斗さんは携帯でどこかへメールを打ち始めた。
ともだちにシェアしよう!