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心配事と突然の帰宅

「友達が迎えに来てくれるからそろそろ俺、行きます」 電話が終わったのか、すぐに戻ってきた入江君はそう言ってお金をテーブルに置く。 「……あ、ちょっと待て、俺らもぼちぼち出るから」 みんな既に食べ終えていたし、ちょうど良いので修斗さんのひと言で僕らも一緒にファミレスを出る事にした。 少し歩くと、入江君の友達だという人物が近づいてくる。 その人は 以前校門の外にいた人……入江君と揉めていたと思った人だった。 少しオドオドした顔でこちらを見るその人は僕たちに軽く会釈をする。改めて見ると、特に悪そうにも見えないし、入江君の言う通り友達なんだとわかった。 「今日はありがとうございました」 少しだけ元気よく入江君が僕らに頭を下げ、そして二人で仲良く帰っていった。 「修斗さん、あの人って前に門のところにいた人ですよね? 本当にお友達だったんだ……」 「そうみたいだね。悪そうな感じにも見えなかったし、何より入江君が笑顔だったから安心した。彼はきっと事情を知ってるんだろうね」 結局入江君の悩んでいる理由はわからなかったけど、こうやってみんなが心配してるんだって事がわかってもらえたと思うから…… きっとそれだけでも入江君には心強いと思う。 ひょんな事から首を突っ込んでしまったけど、周さんや修斗さんもいる。だからきっとなんとかなるよね。 僕も周さんに送ってもらって家に帰る。 「竜太、また明日な」 周さんは周りをキョロキョロと確認してから、僕の額にチュッとした。 「ふふ……ありがとうございます。気をつけて……また明日」 周さんが角を曲がって見えなくなるまで僕は見送り、家に入る。玄関に入るとすぐに母さんが出迎えてくれた。 「相変わらず仲がよろしいこと」 口に手をあてクスクスと笑ってる。 「……見てたの?」 僕が聞いても、なんの事かしら? なんてとぼけてみせる。 僕はハッキリと言ったわけじゃないのに、母さんは僕らの事はわかってくれていた。ほんとうのところはどこまでわかっているかはわからないけど、優しく見守っていてくれてるのは確かだった。 だからいつまでも上機嫌でクスクス笑って僕を見るから、ちょっとだけ恥ずかしかった。 「もう、揶揄わないでよね!」 リビングへ入ると、ソファで寛ぎながらビールを飲んでる父さんに気がついた。 「父さん帰ってたの? お帰りなさい!」 どのくらいぶりだろう? 僕は突然の父さんの帰宅に喜び、すぐに隣に座った。僕の父さんは仕事で殆ど家を空けている。たまにこうやってふらっと帰ってきては数日休み、また仕事で何日も帰らないという毎日だった。 「竜太、足の具合はどうだ?……もう全然問題なさそうだな」 そうだった。 僕が骨折して入院してた時以来だ。 「うん、もう大丈夫だよ。心配かけてごめんね」 父さんが僕のカバンについてるキーホルダーを見て微笑む。 「お? ちゃんと付けてくれてるんだな。なんか嬉しいなぁ」 そう、これは僕が手術する前に帰ってきた父さんがお土産にくれた御守り。よくわからないけど、どこかの国の御守り…… 真っ黒なその姿から、僕はその御守りに「黒くん」って命名して、毎日鞄に付けて一緒に行動してるんだ。 「そうだよ、黒くんのお陰で手術も成功だし、それからもずっと僕の事を守ってくれてるよ。父さんありがとね」 滅多に家にいない父さんだから、こんな些細な事がすごい嬉しいんだ。 「それにしても今日は帰りが遅かったんだな。夕飯は竜太と一緒に食べたかったのに残念だったよ。最近はこんななのか? 友達と一緒?」 あ…… 「ごめんね。僕……友達と一緒だったから……ご飯済ませてきちゃったんだ」 少し寂しげな父さんの顔を見て、申し訳ない気持ちになった。

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