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大切な家族
なんだろう……
ちょっと返事に困ってしまった。
友達と夕飯を一緒にしてたのは事実なんだけど……僕、間違った事言ってないよね。
「そっか。竜太が友達と食事ね……よかったな。俺がここに帰ってくるたびに竜太がいい顔になってくのが嬉しいよ」
そう言って父さんは僕の頭をクシャッと撫でた。
「やめてよ。なんか恥ずかしいな……」
照れ臭くて僕は父さんから少し離れる。
「僕そんなに違う? ……ねぇ、父さん今回はどのくらいこっちにいられるの?」
きっといい顔になっているっていうのは周さんのおかげだ。色々話をしたいけど、でも僕は自分に向いてる話題を逸らした。
「えっとね、一週間はいると思うよ」
「一週間? 長いね! 僕もなるべく早く帰って一緒に夕飯食べられるようにするね」
それだけ伝えて、僕は自室へ戻った。
僕が小さな頃から父さんは仕事であちこち飛び回ってるから、家では殆ど母さんと二人──
父さんがいないことが多かったから、幼い頃は正直寂しかった。
でも、家族のために働いてくれている……父さんは母さんの事も竜太の事も愛してるんだからね……と、母さんに常に言い聞かされていた僕は、寂しさはあったものの何も不満に思う事もなくここまで成長できたんだ。
今も同じ思い。
大好きな、大事な僕の家族。
さっき父さんの話でちょっと返事に困ってしまったのは、周さんの事……
母さんは僕がハッキリとは伝えてないけどちゃんとわかってくれていた。
母さんは周さんのお陰で僕が凄い変わったのをとても喜んでくれた。
今では周さんも家族みたいなものだと言ってくれてる。
父さんにもちゃんと周さんを紹介したいと思ってしまった。
そんな事を考えていたら、鞄の中の携帯が鳴った。
……周さんかな?
そう思い画面を開いてみると、それは周さんではなくて入江君からのメッセージだった。
『今日はありがとうございました──』
そんなお礼の言葉が最初にあり、そこに続くのは僕が知りたかった入江君が悩んでいる内容だった。
「………… 」
そんなに詳しい事は書いてはいなかったけど、僕には十分ショッキングで辛い内容がそこに書かれていた。
「こんなのって……」
そりゃあんな人がいっぱいな所じゃ話せないよね……
迎えに来てくれたお友達の直樹 君も、事情を知っていて心配してくれてるらしい。
でも入江君は直樹君にも被害が及ぶのをとても怖がっていた。
……どうしよう。
僕はどうしてあげたらいい?
入江君が悩んでいる、困っている事がわかっても僕にはどうしてあげたらいいのかわからない。いくら考えても、いい答えが見つからず……
もうそんな悪い人達とは関わっちゃダメだよ、としか僕には言いようがない。
僕が何かできる事……
いくら考えてもベストな答えは見つかるはずもなく、僕は入江君に周さんや修斗さんにもこの事を話して相談してもいいかどうかメッセージを送った。
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