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周の不安

同じ部活だからって、竜太が入江の奴を心配している。 気持ちは分からなくもないけど、花見の時のあれが同一人物だってわかって余計に気になってたんだろうな。 たまたま修斗も関わる事になったせいで俺も首突っ込んじまったけど…… まあ、竜太が関わってるし危ない目に合わせちゃたまんないから、入江の事はとにかく早急に解決したかった。 ……本当は俺、こんな事してる場合じゃねぇんだよな。 おまけに竜太の父ちゃんとも会わなきゃいけなくなった。 入江の事と自分の事と竜太の父ちゃん。 今から頭が痛くなってくる。 でもさ、竜太は深く考えんなって言うけど、いいのかな? 父ちゃんと会うって俺、なんか凄え緊張するんだけど…… 今日は朝からお袋からのメールも来ていて少しうんざり。 でも今は自分の事は後だ── 修斗からのメッセージもちょっと気になるし、バイトがあるけど竜太と一緒に帰ろうと部室へ寄った。 ちょうど入江もいたし、連絡先を交換した。竜太は何かの作業の途中だったみたいだけど、俺に合わせて帰ると言ってくれたからよかった。 下駄箱のところで竜太を待ってる間、修斗と電話で少し話した。 入江を脅してカモにしてる奴ら二人の目星がついたらしい。それと元々入江の友達だっていう直樹がイジメを受けていて、入江がそれを助けて逆恨みされたっていう…… でも何でだ? たかがそれだけなのに、何でそいつらの言いなりになってんだ入江は。 直樹を助けようとする強さがあるのに、なんか納得いかねぇんだよな。 あと、二度と聞きたくなかったあの二人の名前…… 航輝(こうき)海成(かいせい)。 入江を脅してる奴らに航輝と海成が絡んでるかもしれねえから気をつけろって修斗が言うんだけど、もしそうなら話が早い。どうしようか考えてるところに、竜太が不安そうな顔でこっちを伺っているのに気がついて俺は慌てて電話を切った。 航輝と海成の事は、竜太には絶対に言えない……嫌な事を思い出させたくないから。 とにかく竜太には一切関わらせずに、早くケリをつけてしまおう。 帰り道、ちょっと竜太の様子がおかしくなった。口数が少ない。きっと俺の気持ちを少なからず察してしまって不安なんだろう。 ごめんな竜太── 万が一竜太が航輝と海成と接触してしまったら……あの時散々痛めつけて二度と顔見せるなと言ったから、まさか竜太に手を出すなんて事はしないだろうけど…… でも逆もあり得る。 竜太を使って復讐してくるかもしれない。 そう思ったらいてもたってもいられなかった。 早く奴らをなんとかしないと、俺は怖くてしょうがない。 「……周さん? ちょっと怖い顔になってますよ。大丈夫? ……あのね、うちで食事の件なんですけど、周さん……いつなら大丈夫ですか?」 遠慮気味にそう聞く竜太。 心配する竜太に気がつかれないように、俺は軽く深呼吸をした。 「うん、明後日ならバイトもねぇし大丈夫だと思う」 俺がそう答えると、嬉しそうに竜太は笑った。 だめだな…… 竜太には俺の嫌な感情もすぐにわかっちまう。 早く解決しなくちゃな。

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