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いつもと違う
昨日一緒に帰ったその時から、周さんがずっと怖い顔をしている。
きっと本人は気がついてない──
お喋りな修斗さんも今日はなんだか難しい顔をして静かだから康介はオロオロしちゃってるし、いつもと違う雰囲気に二人でどうしたらいいのか戸惑っていた。
「修斗さんもなんか今日は静かだね…… 」
コソッと康介にそう言うと、康介も神妙な面持ちでコクコクと頷いた。
いつもの昼休み……の筈なのに、なんだかいつもと全然違う。
康介と二人で戸惑っていると、周さんも修斗さんも用があるからと言って、さっさと教室に戻ってしまった。
「………… 」
「………… 」
康介と顔を見合わす。
二人が出て行って屋上に誰もいなくなったのを確認すると、康介は大きな溜息をついた。
「修斗さんもさぁ、昨日からずっとあんな感じ。考え事ばっかしてんの。いつもならさ、俺にすぐくっついてきてイチャイチャ……あっ、いや…その……俺が誘っても……あ、違くて……えっと……その… 」
康介が段々と真っ赤になっていくのが面白くて少しだけ様子を見てると、とうとう黙ってしまった。
「……うん、周さんもずっと怖い顔してる。多分さ、入江君の事だよね。何かわかったのかな? 周さん、僕に言うんだよ。入江君ともう関わるなって……」
僕が不満気にそう言うと、慌てた顔で康介が僕を見る。
「ダメだよ! 周さんがそう言うなら、竜は関わっちゃダメだからな! わかった?」
「……なに? 急に大きな声出して。うん、わかってるよ。周さん、僕の事も心配してくれてるんだって。でも僕だって何か役に立つことがしたい。助けてあげたいんだ……」
康介は僕の肩をポンと叩き、そうだよな……と呟いた。
放課後、周さんはバイト。
部活を終えると康介が待っていてくれた。
「周さんに竜と一緒に帰れって言われたからさ」
「あ……なんかわざわざごめんね。僕なら大丈夫なのに……」
二人で学校を出ると、門の外で入江君が立っていた。隣には直樹君もいる。また何か揉めているみたいだった。
「なぁ……あれ」
康介も気がついて、どうしようか? って顔をして僕を見た。とりあえず、無視するわけにもいかないので僕は声をかけた。
振り向いた入江君は気まずい顔をしたけど、横にいる直樹君はすぐに僕の前に飛び出してきて腕を強く掴む。
「い、今から時間ありますか? ちょっとでいいんで俺の話聞いてください!」
物凄い剣幕……
あまりの勢いに僕は驚き、思わず固まってしまった。
「なんだよ! お前、急にびっくりすんだろ! ……おい、離せって! わかったから一旦竜から離れろ!」
康介も直樹君の勢いに驚いて、慌てて突き飛ばし僕を自分の方へ抱き寄せた。
掴まれた腕が少し痛かった。
「直樹……渡瀬先輩ってケーキ好きなんだよ」
入江君がため息混じりに小さな声で直樹君にそう伝えると、僕に向かって笑顔を見せる。
「なら駅前のケーキ屋! 一緒に食いましょう! その横の人も……ね?」
「その横の人も……ってなんだよ! 俺はオマケか? なんかムカつくなぁ。俺はね、康介! 康介ね! 覚えて!」
康介が直樹君にプリプリ怒ってる。
でもさっきまでの深刻な顔が嘘みたいな笑顔の直樹君。
直樹君の奢りってことで、僕らは駅前のケーキ屋さんに一緒に行くことになった。
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