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祐飛と直樹
「だからさぁ、男ばっかでしかも四人って……俺らスイーツ男子かよ。何? 抵抗あるの俺だけ? ねぇ、恥ずかしいって思うの俺だけ?」
スタスタと歩きながら、入江君はなんだかプリプリしている。
康介も、ちょっと馴れ馴れしい直樹君に「俺は先輩だぞ!」とかなんとか言ってプリプリしてるし。
直樹君って、話し始めるとなんだか人懐こくて憎めない雰囲気があって僕は別に嫌いじゃない。
そうだ、雰囲気がちょっと康介と似ているかも……
直樹君は、時折前を歩く入江君をジッと見つめる。その目が何か言いたげで、でもすぐに気のせいかな? って思わせるくらい元気に話し出す。
「俺ね、この店のケーキ食べたかったんだ! やったね 」
店の前までくると、直樹君が嬉しそうに入江君に言った。
「……よかったな」
素っ気なく入江君がそう言って、店内に入るとさっさとショートケーキを注文して奥のテーブルへと進んだ。そんな姿をポカンとして見つめる直樹君。
「……祐飛、慣れてんな。来たことあんの? ここ」
「ん? あるよ。こないだそこにいる渡瀬先輩ともうひとりの先輩に連れてこられたって言ったじゃん」
そう……
あの時、入江君は直樹君と揉めてるように見えたから、修斗さんと半ば強引に連れて行ったんだっけ。
「ごめんね。あの時入江君と揉めてるのかと思って……」
僕がそう言うと、直樹君は首を振った。
「いいんです。誤解させるような事してたんだから……すみません」
ペコッと頭を下げ、またケーキのケースを覗き込んだ。
「ねぇねぇ、祐飛、どれおすすめ? 俺決めらんねぇから祐飛選んで。ねぇねぇ」
「俺だって知らねえよ。適当に選べって……」
テーブルについてさっさと食べ始めている入江君はまるで興味なさそうにそう答える。
「……祐飛が選んでくれんのが嬉しいんじゃん」
小さな声でそう言った直樹君はシュンとしながら入江君と同じショートケーキに決めていた。
四人で奥のテーブルに座る。
僕はケーキを食べながら入江君と直樹君の様子を見ていた。
「………… 」
直樹君は入江君の隣にぴったりと寄り添って座り、入江君はちょっと迷惑そうな感じに体を避けてる。
「なぁ祐飛、あんまり甘いもん得意じゃなかったよな? 俺が食べてやろっか?……ほら、ここクリーム付いてる……」
眉間に皺を寄せてる入江君に御構い無しに、直樹君は指で頬についたクリームを拭うとぺろっと舐めた。
「お前、食べてやろっか? なんて言って、食いたいんだろ? 素直にそう言えよ。ほらやるよ」
呆れ顔でスッとお皿を押し出すと、はにかんでそれを食べ始める直樹君。
本当に仲良しなんだな。入江君のあんなリラックスした表情、初めて見たかも。
「ところでさ、直樹君……僕に聞いてもらいたい事があるんでしょ? なに? ここで話せる事かな?」
入江君の顔色も伺いながら、僕は静かに聞いた。
「ゴホッ……ん、そうなんです! ……あのっ 」
「いいよお前、食ってからにしろ。口に入ったのが飛び出る…… 」
むせてる直樹君に慌ててそう言って、康介がおしぼりを差し出した。
入江君は外方を向いたまんま、興味がなさそうにまた頬杖をついていた。
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