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直樹との出会い
俺が小学二年の頃、直樹が転校生として俺のクラスに来た──
明るくて活発で、運動神経も抜群。
すぐにクラスにも打ち解けて、友達も沢山作ってた。顔もカッコよかったから、女子にも人気だった。
もちろん俺もすぐに仲良くなったよ。
家も近所だったし、学校に行くのも放課後遊ぶのも直樹とばかりになったんだ。
学年が上がり三年生になると、クラス替えのせいで俺は直樹とはクラスが離れてしまった。
それからはあまり遊ばなくなった。
別に何かあったとかじゃなくて、お互い極自然に手近な友達とつるむようになっただけ。でも登下校はよく一緒になったから、全く接点がなくなったわけじゃなかった。
五年生になってもう一度クラス替えがあって、また直樹とクラスが一緒になった。
俺はすごく嬉しかったのに……
直樹はあんまり嬉しそうじゃなかった。
前はあんなに仲良くやってたのに……俺の気のせいじゃなければ、直樹は俺の事を避けてるようにも見えた。
それに暗い。俺の知っている直樹はもっと活発で明るい奴だったはず。その違和感のある態度は何故か俺の前でだけ。あんなに明るくて元気だった直樹が、俺の前でだけ物静かで大人しくなってしまったんだ。
意味がわからない……
それでも登下校は一緒になるから、なるべく俺は直樹に話しかけて以前のようになれるように努力した。知らない間に直樹の気に触るようなことをしてしまったのかとも思って、俺は必死に様子を伺っていたんだ。
でも、そんなある時気づいてしまったんだ。
放課後忘れ物をした俺は教室に戻った。
すると誰もいない教室で、直樹が俺の席に座って体操着の袋に顔を埋めてた……
俺の体操着。
最初は何してんだろうと声をかけようと思ったんだけど、すぐに思い留まり見なかった事にしてそのまま俺は一人で下校した。
どうしよう……ドキドキする。
俺の勘違いじゃなければ……
あれは、直樹は俺の事をそういう目で見てるんじゃないか……?
ちょうどこの時期、好きな女子の話とか女子の体つきの話とか、誰々が好きだから告白する、とか……異性の話や恋の話で男子で盛り上がっていた時期だった。
直樹はそういう時は口数少なく、つまらなそうにしてたっけ。
この日はクラスの奴が「好きな女子の体操着がすごいいい匂いがした!」と言っていて、みんなで変態だって言って揶揄っていた。そう、よくある光景。日常の一コマ。
俺はその事を思い出していた。
直樹は俺の事が好き……?
俺らが女子の事を可愛いとか好きだとか思うように、直樹も俺の事をそういう風に見ているんだろうか。
直樹は俺の事を意識して、あえて距離をとってるのかな?
いや、俺の勘違いかも……
だって俺、男だよ?
たまたま好きな子の体操着の匂いの話をして、たまたま直樹が俺の席に座っていて、たまたま俺の体操着に顔を埋めていただけ……
何度理由を考えても、俺の頭で導き出される答えは一つだった。
俺は直樹の事は好きだけど、直樹が俺の事を思うような「好き」とは違う。
友達として好きなんだ……
直樹の思いに気付いてしまったけど、それが本当なのかも判断出来ず、もちろんそれを認める事も確認することも出来ずに、それからはなんとなく俺も直樹と距離を置くようになってしまった。
そして直樹と話さなくなって、俺らはそのまま小学校を卒業した──
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