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高校へ
学校ではいつもと変わらず──
隣のクラスの直樹も休み時間になるとちょいちょいと俺の所に遊びに来る。直樹を苛めてた二人も、もう直樹にちょっかいを出す事もない。
あの事があってから、俺はなんとなく直樹と顔を合わせにくくなってしまった。
俺はまた、少しずつ距離をとろうと努力した。
直樹には俺があの双子にいいようにされてるのを絶対に知られたくなかった。知ったら直樹は自分を責める。そして俺を助けようとするに決まってる。
自分の好きな奴があんな目にあわされてるのを知ったらどう思うだろう。
俺が逃げたら、今度は直樹が同じ目にあうんだ。
好きでもない奴に体を弄られる……あんな事をされるなんて。絶対に直樹にはそんな目にあわせたくなかった。
初めて双子に体を弄られた次の日、頬に残る殴られた痣を見た直樹は俺を問い詰めた。あの二人も俺より先に帰ったから、俺が何をされたのかはきっと知らない。奴らは自分に害が及ばなければどうだっていいらしく、俺に何かを聞いてくることもなかった。
でも直樹は違った。その二人にも俺に何があったのかを問い詰めていた。そして二人は直樹の代わりに俺を先輩に紹介したという事実を教えてしまった。直樹にその先輩に会わせろとしつこく言われたけど、会ったのは直樹の話をつけるために行っただけで、その時に少し揉めて殴られたのだと理由を作って納得させた。
それからは週に一回くらいのペースで双子に呼ばれ、俺は体を差し出す。
性欲処理──
そんな言葉が頭を過ぎり、悔しく思ってもどうしようもできない。
直樹を守るため……
俺が少し我慢すればいい事だと思い従った。
直樹に気が付かれないために、俺は航輝と海成にお願いをした。
暴力を振るってもいい、体に噛み跡やキスマークを付けてもいい。
でもそれは見えない所にしてくれ、と。
直樹は俺についた傷を物凄く気にしていて、顔を合わせば何かないかチェックしていたから。
双子は俺の言ったことに快く応じてくれ、約束をしてくれた。
それから中学を卒業するまで、航輝と海成の呼び出しは続いた──
高校はあえて直樹とは別の高校を選んだ。それはできるだけ直樹との接触を少なくするためだった……
直樹のことは親友として大切なんだ。
だから俺とはもう関わらない方がいいと思ったんだ。
高校に入学するときには、航輝と海成からの呼び出しもだいぶ頻度が減っていた。減った代わりに、俺に対する扱いは酷くなっていた。今までは双子のアパートで、航輝と海成だけを相手にするだけでよかった。でもアパート以外の場所にも呼ばれるようになったし、知らない奴を相手にさせられることも増えていった。
だから「痕は見えない場所に」という俺との約束を破られる事も多くなっていた。
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