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縋りたいけど…

ある日突然直樹が俺の学校まで訪ねてきた。 首筋につけられたキスマーク……気づかれたくなくてメールも電話も避けていたから、俺と連絡が取れず痺れを切らして直接出向いたらしい。 門の所にいる直樹は心配そうな顔をして佇んでいて、俺に気がつくなり駆け寄ってきた。 俺の腕を掴み、グッと顔を近づける。 首筋にある絆創膏にすぐに気が付き、瞬間直樹は目に涙を溜めた…… 直樹が行った学校には、あの二人もいる。二人から何かを聞いたらしく、俺が航輝と海成と会ってる事を未だに問い詰めてくる。 俺が傷つけられるのは堪えられないから…… お願いだからもう奴らには会わないでくれと泣きながら直樹は俺に言った。 俺がもう会ってないから安心しろといくら言っても直樹は信じてはくれなかった。 家の前まで来て俺がちゃんと帰宅できたか確認したり、毎日夜に電話をくれたり…… そんな状況でも、呼び出しはかかる。その都度、直樹に気がつかれないよう誤魔化しながら、俺は呼び出しに応じていた。 直樹にバレるのもきっと時間の問題── そりゃそうだ…… 自分の好きな奴が自分のせいで痛い目にあってんだ。必死になって止めるし、なんとかしようって思うよな。 そんな直樹に俺がキレて「二度と来るな」と何度も伝えた。 俺が頑なになればなるほど、直樹は俺に関わろうとする……もう俺もどうしていいのかわからず限界が来ていたんだ。 そんなタイミングで渡瀬先輩や橘先輩達が、助けてくれると俺に言ってくれた。 あいつらから解放される? 直樹も俺も助けてもらえる…… 俺は先輩達に縋りたかった。 助けてもらいたかった。 ……でも、また今度は俺の代わりに先輩達が犠牲になってしまう。 もう連絡が来ても会わなくていいと言ってくれた。 心配しなくてもいいと言ってくれた。 でもダメなんだ…… また今日もメッセージが届いた。今回は航輝と海成から。呼び出された場所は二人のアパート。 俺はどうしても無視する事が出来なかった。 助けてほしいけど、誰かがまた犠牲になるのはどうしても許せなかった。 渡瀬先輩達と別れ直樹に家まで送られて、少し遅れてしまったけど俺はあいつらの待つアパートへと向かった。 玄関を開けると、いつものように二人が和かに出迎える。 でも今回は少し違っていた──

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