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団欒
父さんが周さんと腕を組んで一緒に帰ってきたのにも驚いたけど、こっそり覗き見してたり僕と周さんの間にわざと割って入って僕の事をのけ者にしたり……
父さんの態度になんだかイラっとしてしまった。
周さんは髪型のせいか、いつもと雰囲気が違くて可愛く見える。それに少し口数が少ないみたい。やっぱり緊張してるのかな……
父さんに会ってもらいたいって話した時だって、僕と付き合っている事を言おうとしてたくらいだから、きっと色々と考えてくれたんだろうな。
僕は深く考えないで軽い気持ちで言ってしまったのに、周さんを悩ませてしまったと思うと申し訳なく思った。
でも、こうやって自分の家で寛ぐ周さんと父さんが並んで話をしているのを見ると、なんだか幸せな気持ちになった。
ビールを持って父さんのところへと戻ると、周さんが黒くんを持っていた。聞くと、父さんが僕のと一緒に買っておいてくれてたらしい。
胸がくすぐったい……
凄く嬉しかったけど、こういうのは照れ臭くてダメだな。
でも周さんが喜んでくれてよかった。
食事をしてる間中も、父さんはいつも以上にお喋りになっていて周さんに質問攻め。
「周君はなんで竜太と仲良くなったの?」
「えっと……廊下でたまたまぶつかって……竜太君小柄だから俺、体当たりでぶっ飛ばしちゃって…… 」
「あはは何それ! マンガやドラマでよくあるやつだね」
「あ……まぁそんな感じっす」
父さんはほろ酔いなのか、普段以上に賑やかに喋っている。変な事を口走らなければいいけど。
「そうそう! 周君ね、竜太をおんぶしてうちに来たのよ。あの時はびっくりしたわ」
父さんに気を取られていたら、母さんが余計なことを言い始めた。
……でもそれね、廊下でぶつかった時じゃないからね。
「おぉ! 周君におんぶされたら見晴らしいいんだろうな」
「………… 」
確かに、僕もあの時見晴らし良くって楽しくてはしゃいでしまった……
「あ! いつもお世話になってしまって申し訳ありませんって母が…… 」
周さんが思い出したようにそう言うと、母さんは「そんな事……」と首を振る。
「いえいえ、こちらこそお礼を言いたいくらいよ。お母様にもそのうちお会いしたいわ。よろしく伝えてね」
周さんが小さく頷き、照れ臭そうに笑顔を見せた。
父さんはそのまま話の流れで周さんのお父さんの事を聞くもんだから、僕はちょっとドキッとしてしまった。父さんは周さんにお父さんがいないのを知らないから、悪気はないのはわかっているけど……
「えっと……俺、父はいないんです。俺とお袋の二人で暮らしてます。あ! 気にしないでください。俺が物心ついた時から既に父親いなかったんで記憶とか全然ないし何とも思ってませんから。あ……それに…… 」
周さんは戸惑ってしまった父さんに気にしないでと伝え、最後何かを言いかけてやめてしまった。
それからは父さんの一方的なお喋りが続いて、周さんがバンドを組んでると知るや否やリビングから出て行き、ギターを持って戻ってきた。
「なんでギターなんか持ってるの?」
驚いて聞いてみると、若い頃にギターを少しやっていたと言って得意げな顔をした。
周さんが父さんのアコースティックギターを抱え弾き始める。
いつもライブでやる曲をゆっくりとしたテンポで弾き始め、歌い始める周さんに僕は思わず見惚れてしまった。
「凄いねぇ! 周君かっこ良すぎだよ! お父さんびっくりした!」
顔を紅潮させ父さんが歌い終えた周さんに握手を求める。
……なんで握手?
ぶんぶんと両手で握手をして、満足そうに父さんも母さんも拍手をする。
照れ臭そうに頭を掻く周さんが可愛い。
でもほんと周さんかっこ良かった。
食事を終えてからもそのまま無理矢理ギター講座になってしまい、父さんが周さんから離れなくてちょっと困った。
食後のデザートに焼き上げたチーズケーキを僕は用意する。
不器用そうにギターを抱える父さんに寄り添ってあれやこれや言ってる周さんを見ながらケーキを運んだ。
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