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花火大会
「やっぱり康介くんはスポーツやるからいい体してるよね」
横で志音がジトッとした顔で先生の事を見てるのもお構いなしに、先生がパンツ一丁の康介を見てひと言呟く。
「……? なんだよ! 先生、俺の事エロい目で見んなよ!」
変に慌てた康介が両手で胸を隠した。
「康介その隠し方なんか変! 女子かよ!」
爆笑しながら修斗さんは康介に自分のパーカーを肩から掛け、その流れで後ろから康介をギュッと抱きしめる。
「ほんと、センセー? 駄目だよ、康介をエロい目で見ていいのは俺だけなんだからね!」
冗談なんだか本気なんだか……康介ってば修斗さんの言葉に今までにないくらい真っ赤な顔して黙り込んじゃった。
「あはは、馬鹿言うなって。お前らの体なんて興味ないし。俺は志音の体じゃないと欲情しないから安心しろ」
「………… 」
志音まで真っ赤になってる。
ちょっと僕も恥ずかしい……
「ほらさっさと食おうぜ。みんなして先生に揶揄われてるんだよ。ほら、竜太こっちおいで」
周さんに呼ばれ、僕は隣に座った。
もともと遊んでいた時にずぶ濡れになっていた短パンも少し乾いていたので、それをまた履き康介も修斗さんの隣に座り食べ始める。
クスクス笑いながら修斗さんが康介に頭をすり寄せて謝ってる様子が微笑ましかった。
こうして僕らは皆でしばらくバーベキューを楽しみ、また分担して後片付けをし別荘に戻った。
僕や志音以外は服のまま川に入ってしまったので、ひとまずシャワーを借りて順番に浴びる。着替えも済ませ寛いでいると、先生が今日と明日、地元の花火大会がある事を教えてくれた。
「昼も遅目だったし、晩飯はその辺の出店とかでいいだろ? 帰り時間決めて花火は別行動にしないか?」
先生の提案にみんなで賛成をして、僕らは花火大会に出かける事にした。
夕方花火を見にみんなで別荘を出る。少し歩くと周さんが僕の手を握ってきた。
「人混みに出るまでな……」
ふふ…… 照れくさいや。
こんなこと、周さんのほうからしてくれるのなんて珍しい。でも普段と違った環境で、気持ちも少し大きくなっていた僕は人目があっても別にいいのにな、なんて思ってしまった。
別荘地を抜けるとすぐに人も増え、賑やかになってきたので周さんの手がすっと離れる。
浴衣姿の男女のカップルもたくさんいた。
いつも思う事だけど、何も気にすることなく手を繋いで……ちょっと羨ましいと思ってしまった。
「竜太?……人多くて嫌か?」
突然に肩を抱かれ、驚いて周さんの顔を見上げる。
「いえ……人が多くて嫌って言うか……えっと……ん、なんでもありません」
手を繋ぐカップルが羨ましかった、なんて言えないし。言ったところでどうすることもできないんだ
「………… 」
「ほら……手」
周さんが外方を向きながら、少し乱暴に僕の手を握る。
「……え?」
「別にいいだろ。よく考えたらこんな所、知ってる奴だっていねえんだし。それに誰も見てやしねえだろ……」
ボソッとそう呟くと、僕の手をキュッと握ってくれた。
「ありがとうございます」
僕の気持ちを汲み取ってくれて嬉しかった。
僕の考えていた事、分かってくれたんだ。
「ふふふ…… 」
「……? なんだよ、笑うなよ」
こっそり顔を盗み見たら、周さんの顔が真っ赤だった。恥ずかしいの我慢してくれてるんだとわかって益々嬉しくなり、僕もキュッっと手を握り返した。
「ほら、行くぞ。高坂のやつがあっちの河川敷からだと花火がよく見えるって教えてくれたから、歩くぞ」
早足で歩く周さんに少し引っ張られるように、僕は大好きな人について行く。
もうすぐあがる花火、楽しみだな──
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