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寝室争奪戦

「ねえ、それならジャンケンじゃなくて、ゲームして寝る場所決めませんか? 僕ね、みんなで遊びたくて幾つか持ってきたんです」 ごそごそとバッグの中から出していると、康介が寄ってきて一緒に出すのを手伝ってくれた。 「やけに荷物多いと思ったらこんなのが入ってたのか……めっちゃゲーム入ってんな! トランプにウノ、オセロまで……なに? このデカイの……」 「あ、それはツイスターゲームだよ! 子供の頃康介と母さんと三人でやったじゃん。覚えてない?」 一度やっただけで、そのまま物置にしまわれていたツイスターゲームも、思い出して持ってきちゃったんだ。 「……いや、それは覚えてるけど、懐かしいな……っておい、よくそれをここに持ってこようと思ったね」 康介は驚いてるんだか呆れているんだか、なんだか変な表情をしながら僕がバッグの中からそれらを出すのを手伝ってくれた。 「凄い楽しいじゃん。みんなで何かしたいなって思ったから、とりあえず持ってくれば遊べるかなって思って……」 周さん達とツイスターゲーム…… うん! 楽しそう! 僕は持参したゲームの中からどれかを選んで、みんなでやって勝敗を決めようと思ったんだ。色々ある中で、やっぱり断トツでツイスターゲームが面白そうだと思った。 「ね? これ! このツイスターゲームやりましょ! 勝った人が部屋決めるんです」 修斗さんはすぐにノッてきてくれて、やるやる言ってる。 周さんは面倒臭そう。 「僕と周さんチーム対、康介と修斗さんチームで対戦です」 僕は一人マットを広げ、準備を進めた。 「ああ、ツイスターゲームって何だろうって思ったらこれかぁ」 僕の事をぼんやり見ていた周さんがボソッと呟く。周さんはツイスターゲームがどんなゲームなのかわからなかったらしい。 「ね? 周さんやりましょ」 僕と修斗さんは、やる気まんまんで準備を終え、周さんと康介の顔を見た。 「しょうがないなぁ、どうする? 代表一人ずつ出て勝負するか…… 」 そう言って康介が立ち上がり、ツイスターゲームの前に立つと、後ろから志音も声を上げた。 「なんか楽しそうじゃん。俺もやりたい」 志音の言葉に先生が驚く。 「なんだよ、俺らはいいんだよ。負けたら寝室使えねえぞ……」 志音は先生を振り返りキッと睨んだ。 「別に? 俺みんなと雑魚寝だっていいし、陸也さんと二人で寝なくたっていいんだし」 志音、先生に対して超不機嫌。先生はそんな志音にこれ以上何を言っても益々機嫌が悪くなる一方だと悟ったのか、やれやれ……といった感じで肩をすくめた。 「じゃ、志音と先生チームも参加ね。勝った組から寝室を選ぶんですよ……じゃぁ、まずは一回戦目! 僕と康介と…… 」 僕は康介の前に立ち、志音と先生にも声をかける。 「志音達は誰やる? 志音?」 そう聞いたところで僕は周さんに腕を引っ張られた。 「……? なに? 周さん」 振り返ると不機嫌そうな周さん。 「竜太はやらなくていい。俺がやるし、それに一回勝負だ」 周さんが一回勝負なんて言ったから、修斗さんも慌てて康介に詰め寄っていた。 「俺やりたい! 康介は応援! ね? 俺やる! はい、どいてどいて 」 修斗さんに押し退けられた康介がぶーぶー言ってる。修斗さんはともかく、あまりやる気のなかった周さんが急にやるなんて言い出したのがちょっと嬉しかった。 でも僕もやりたかったな…… 「周さん、僕もやりたいから二回勝負に…… 」 「だめ! 俺やるから一回戦でおしまい!」 「………… 」 怖い顔で睨まれちゃったから、諦めて志音の方を見た。 「志音達はどうする? 誰がでるの?」 「俺が…… 」 「俺やるから! 先生はあっち行ってて」 先生が名乗り出るのを割り込んできて志音が周さんの横に並んだ。 「志音やだ……俺がやるよ。ねぇ、志音?」 先生が情けない声で志音に言うけど、フンって知らんぷりされてる。 「あ……じゃあ、志音ね。頑張って 」 こうして寝室争奪ツイスターゲームが始まった。

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