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寝室争奪戦決着

「じゃあ僕がスピナー回しますね」 ムスッとした顔の周さんと、にこにこご機嫌な修斗さん。そして何やら複雑な表情の志音の顔を見渡して、僕はルーレットを回した。 「ねえ、よく見たらさ、俺不利じゃね? 周も志音君も手足のリーチ長過ぎだよ。なんかズルい!」 始まった途端、修斗さんが他の二人との身長差に気が付いて文句を言いだした。子どもと大人だったら不利だと思うけど、このくらいの差なんて大して問題じゃないよね。 「大丈夫ですよ、修斗さん足長いから」 適当にそう言ったら修斗さんは満足気に位置についてくれた。 「はい気を取り直して……最初は右足が赤でーす」 三人がそれぞれ右足を赤い丸に乗せる。 僕は楽しくて、次から次へと出た指示を読み上げた。 …………。 最初は余裕だった三人も、回数が増えるにつれて姿勢がキツくなり気がつけば物凄い格好になっていた。 「………… 」 これはゲームだ。ゲームだから…… 目の前の光景── 仰向けで両手両足をついている修斗さんの上に覆いかぶさるようになっている周さん。その周さんと修斗さんの間に片足が入り込んで、これまた辛そうな姿勢の志音。 ……周さん、修斗さんにくっつき過ぎ。 「ちょっと周! 顔っ! 近いって! 乗っかってくんなよな!」 「う……うるせぇよ、さっさと尻をつけ!」 「竜太君……早くっ、次は?」 志音に言われ、慌てて次の指示を出した。 楽しそうだと思って持ってきたのに……いや、楽しいんだけど、でもなんだろう。モヤっとしてしまう。 「周さん! 修斗さんからもっと離れろよ!」 康介が思わず声を荒らげる。きっと僕と同じ気持ちなんだろう。そう、楽しいと思っていたのに、自分の好きな人がゲームとはいえ他の人と密着しているのを見るのはちょっと嫌だった。 こんな事で、こんな風に思ってしまうなんて心が狭い。ごめんなさい。 「うるせえ康介! しょうがないだろ!」 「あ〜、康介焼きもち妬いてる可愛い!」 修斗さんだけ、余裕でケラケラと笑ってる。 「あーーー! ダメだ……悪い竜太、俺もう限界」 周さんがとうとう力尽きて腕から崩れてしまった。周さんが修斗さんに抱きつくように倒れこむから、康介がギャーギャー文句を言いながら乱入して周さんを修斗さんから引っぺがした。 「もー! 周さん! 何してくれてるんすか! 修斗さんから早く離れろ!……修斗さん大丈夫? どこも痛くない?」 康介が修斗さんの体をポンポンしながら心配そうに覗き込んでる。修斗さんは修斗さんで、よっぽど楽しかったのか笑い転げている。 結局康介の乱入で志音も尻餅をついてしまっていて、もう何だかよくわからなかった。 「え……と、周さんが最初に倒れたから僕たちの負けですね」 僕がそう言うと、修斗さんも頷いた。 「寝室は最初言ってた通りセンセー達が使ってね。俺と康介は二階のもうひとつの部屋使わせてもらうね。周と竜太君はもちろんリビングで」 寝室争奪戦は、こうして呆気なく終了した。

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