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恋バナ…?

先生が僕らのために布団を持ってきてくれた。でもまだ寝るには早いので、みんなでお菓子を食べながら、しばらくお喋りタイム。 休み明けの文化祭の話や康介のバイトの話など他愛ない話で盛り上がる中、そんな様子を先生は離れたところでぼんやりと眺めていた。疲れちゃったのかな? 相変わらず志音は先生に対して冷たい態度だし、僕がこのお喋りの輪に先生を誘うのもなんだか違う気がしたから特に何も言わなかった。 「俺は先に休んでるわ……適当にお前らも寝ろよ? あとそこ、布団敷くならその衝立移動していいから好きに使え。じゃおやすみ」 気怠そうにそう言って、先生はすたすたと二階へと上がって行ってしまう。僕は少し寂しそうにその後ろ姿を目で追う志音を見逃さなかった。 「……志音ももう寝る?」 僕が聞くと、軽く首を振りまた話に戻る。気になるんなら先生のところに行けばいいのに。 「志音君、まだセンセーに怒ってるの? なんか子どもっぽい志音君も可愛いね」 修斗さんも志音の様子を見て揶揄った。確かに、今でこそ仲良くなって意外な一面を見せてくれる志音だけど、学校だとツンとすまして近寄り難い印象だ。 「別に怒ってないし。でも先生みんなと一緒だからわざとああいう事言ったりして、軽い人ぶるから俺が嫌なんだ…… 」 志音の言いたい事わかる気がする。 「学校でもさ、みんな先生目当てに保健室行くし、先生もあんなんだから軽く見られてるんだよ。本当はそんなんじゃないのにさ」 「………… 」 「志音君、別に陸也さんって呼んだっていいんだよ? さっきも先生じゃなくて陸也さんって言ってたじゃん。二人の時は名前で呼んでるんでしょ?」 修斗さんが志音の言い方に気が付いてそう言うと、志音はちょっと赤くなった。 「俺、陸也さんって呼ぶより先生の方が言いやすいんだよね。でも先生は名前で呼んでもらいたいみたいだから……」 いつの間にか、先生と志音の話になっちゃった。 「あいつチャラいし、志音と結構年離れてんじゃねえの? なんであんなのと付き合ってんの?」 また周さんてば、言葉を選ばず失礼な言い方…… 「なんか周さん身も蓋もねぇな! その無神経さにちょっとビックリだよ」 康介が僕の代わりに周さんにつっこんだ。 「……それね、先生きっと気にしてると思うから言わないであげて。俺、別に先生が幾つかなんて、どうだっていいし。てか歳が気にならないって言ったら嘘になるけど、それは先生が……じゃなくて俺がガキだって事の方が思い知らされることが多いから……ね」 志音がこうやってお喋りなのは珍しいな。 「俺、今の親以外で初めて自分の生い立ち話せたのが先生なんだ。多分俺、先生に親を重ねてるところもある。恥ずかしいけど甘えちゃうんだよね。本心晒しても先生なら許してくれる……って甘えてる。俺がガキなんだ……」 そう言って笑う志音は、初めて会った時とは全然違ってちゃんと年相応な高校生に見えた。 ……そういえば僕、志音の事あまり知らないや。 それから志音は、先生は見た目や言動はあんなだけど、やっぱり大人で包容力があって頼れる存在だって、一生懸命先生のフォローをしていた。 「いいと思うよ。志音君、センセーと付き合うようになって可愛くなったもん。大事にされてるってよくわかる。素直な志音君、可愛いね」 修斗さんがそう言うと、志音は真っ赤になって否定した。 「もうやめてよ、なんで俺こんな話してんだ? おしまいおしまい!……恥ずかしい!」 慌ただしく志音は「おやすみなさい」と言いながら二階へと上がっていってしまった。 「ふふ……志音君なんかいいね」 修斗さんも楽しそう。 それより…… 「もう、周さん! なんであんな風な言い方しかできないんですか? ちょっと失礼ですよ」 さっきの事を僕が咎めると、周さんはキョトンと首を傾げる。 「だってあいつ、最初竜太の事狙ってただろ? どうしてそっから高坂になったのかな〜って不思議だったからさ……」 「それにしたって言い方もっと考えてください!」 僕が言うと、修斗さんはクスッと笑った。 「周が竜太君に怒られてシュンとしてる」 周さんが修斗さんを睨むと慌てて康介が修斗さんを突っつく。 「もう、修斗さんちょっかい出さないの……俺らもそろそろ寝ましょ?」 そう言って康介も修斗さんも「また明日ね、おやすみ」と言いながら二階へと行ってしまった。 「じゃぁ、僕らも…… 」 周さんはさっき先生が言っていた衝立を近くまで移動させ、簡単な目隠しを作り、僕は布団を二組並べて敷いた。 みんなと同じ屋根の下、ちょっと照れ臭いや。

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