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それぞれの夜… 周と竜太
志音も康介達も二階に上がってしまったので僕らも寝る事にする。
二組敷かれた布団にそれぞれ入り「おやすみなさい」と挨拶を交わし、僕は目を瞑った……
部屋は違うけど、みんなと一緒だからいつものように周さんと抱き合って眠ることはできないよね。だから一人で寝てるけど、やっぱり周さんとくっつきたいな。
……周さんはもう寝ちゃったかな?
僕はそっと横を向いて周さんの顔を見る。
仰向けで頭の後ろに手を組み、目を瞑っている周さんをジッと見ていると目を瞑ったまま周さんが口を開いた。
「竜太……寝た?」
小さな声でそう言った周さんに「起きてます」と僕も囁く。
「夏休み後半さ……しばらく会えなくなるけどごめんな」
突然、なんの話かな?
「大丈夫ですよ。僕も少しバイト入ってますし。周さんもアルバイト忙しいんですか?」
「あ……いや……うん、そんなところだ」
僕の方を見ず、相変わらず目を瞑ったままの周さんがしどろもどろな返事をした。
アルバイトじゃないんだね。
その口調から、僕は周さんが嘘をついているとわかってしまった。
気にならないわけじゃないけど、理由はわからないけど、ちゃんと「しばらく会えない」ということは教えてくれたから、僕は理由を問い詰めることはせず周さんの布団に潜り込んだ。
今日、周さんが元気がないように見えたのも、きっとこの事が原因なのかもしれない。
僕じゃ力になれない?
周さんが元気がないと僕は心配……
「僕、周さんと一緒の布団がいいです」
そう言って、布団の中で周さんの腕に抱きつき顔を埋める。
「そうだな……」
周さんはそんな僕に腕を回し、頭頂部へキスを落とした。
「竜太……おやすみ」
優しい声で周さんが僕に言う。
「おやすみなさい……」
僕は周さんの腕にすっぽりと包まれるようにして眠りについた。
窓から朝の光が差し込み、僕は自然と目が覚めた。
昨晩寝入った状態と同じに周さんの腕に抱かれたままだった僕は、起こさないようにそぉっと布団から抜け出した。
まだ誰も降りてきてないから、みんなぐっすり寝てるんだろうな。
昨日買っておいた朝食用のパンを袋から出し、僕はひとりコーヒーの準備を始める。
もしかしたらみんなお昼くらいまで寝てるかもしれないけど、せっかく卵やベーコンなんかも買ったことだし、もう少ししたら朝ごはんを作ろう。
服を着替え顔を洗って、リビングのテレビをつけた。
ぼんやりと朝のニュースを見ていると、二階から志音が降りてきた。
「おはよう、竜太君早いね。周さんはまだ寝てるの?」
衝立の向こうをチラッと見て、志音は出来上がったコーヒーをカップに注ぐ。
「きっとみんな起きてくるのゆっくりだよね。朝ごはんどうする? ベーコンエッグ作ろうかなって思ってたんだけど、志音は食べる?」
僕が聞くと、ぱっと明るい笑顔で「もちろん食べる」と言ってくれたから、冷蔵庫から卵とベーコンを取り出し朝食の準備を始めた。
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