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おはよう
「ごめんね、本当はもう一泊くらいしたいんだけど仕事で……みんな俺に合わせてくれたんだよね?」
志音が一泊しかしないで帰ることを自分のせいだと気にしてる。
「違うよ、もともと僕もバイトあったしそんな事気にしないで」
僕はそう言いながらキッチンに立った。
「そういえば康介や修斗さんは朝遅そうだよね。作るの後でいいかな?」
「あ、もう起きてたみたいだよ。さっき喧嘩っぽい声聞こえたけど……いつもの調子でふざけてるのかな? 大丈夫だよね」
ちょっと心配していると、二階から誰か降りてくる。見ると修斗さんをおんぶした康介が、申し訳なさそうな顔をして降りてきていた。
「おはよ、みんな早いね」
そんな康介とは対照的に、元気そうな修斗さん。
リビングまでくると康介はそっとソファに修斗さんを下ろし、言葉少なく洗面所に行ってしまった。
「修斗さん、どうしたんですか?……康介元気ない」
先程志音が「喧嘩っぽい声が聞こえた」と言っていたから心配になってしまった。康介と修斗さんが小競り合いをしているのはいつものことだけど、折角の旅行中なんだし喧嘩したならすぐにでも仲直りをしてほしかった。
「……あ、ちょっとふざけてたら足捻っちゃって。康介責任感じてるだけだし、大した事ないから気にしないでね」
そんな風に修斗さんが言うから、今度は違った意味で心配になってしまった。足を捻ったなんて、康介におんぶされてるくらいだから相当痛いはずだと思って僕は慌てて志音を見る。
「大変! 志音、湿布とかないの? 救急箱ある?」
「あ……いや、竜太君……俺なら大丈夫だから」
修斗さんは湿布なんていらないから大丈夫だと笑ってる。でも足捻ったんなら湿布貼ってた方が楽でしょ? そんなことで遠慮なんか必要ないのに。
でもよく見るとなんだか気まずそうな顔をしている修斗さん。
志音は何か感じたのか少し顔を赤くして「湿布は無いし足は大丈夫ですよね?」なんて言っている。
「そもそも志音君たちが悪いんだからな!」
修斗さんがなぜか志音に怒り始め、文句を言われた志音も申し訳なさそうに頭を下げた。
「……?」
なんだろう……
まあでも足が大丈夫ならそれはそれでいいんだけど。
「竜太、竜太どこ?」
衝立の向こうから周さんの呼ぶ声が聞こえた。騒がしかったから起きたかな? 僕はそそくさと周さんの方へ行くと、まだ目を瞑って横になってる周さんがポンポンと布団を叩いていた。
「ここ、竜太来て……」
言われるがまま周さんの横に寝転ぶと、ギューって抱きつかれキスをされた。
「目が覚めたら竜太いねえんだもん。ちゃんとここにいろよ……」
寝ぼけてるのかな?
可愛いことを言う周さんに思わず目尻が下がってしまう。
「おはようございます。そろそろ起きてください。みんな起きてますよ」
僕が言うと、また僕にしがみついてきて離してくれない。
「やだ……竜太がキスしてくんないと俺、起きられない」
「………… 」
衝立の向こう側からクスクスと笑い声が聞こえる。
段々と恥ずかしくなり、僕は周さんの頬をペチッと軽く叩く。そしてそっと唇を重ねた。
「ちょっと、いい加減恥ずかしいからそろそろ目を覚ましてください」
むにゃむにゃと顔をこすりながら、やっと周さんが起き上がった。
「コーヒーの匂いする……竜太おはよ」
のそのそと眠たそうにお腹を掻きながら、周さんはみんなのいるリビングに歩いていった。
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