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みんなで朝食を
志音にコーヒーを淹れてもらった周さんはまだ半分寝てるのか、横で楽しそうに揶揄ってくる修斗さんのことを見事なまでに知らんぷりしてコーヒーを啜ってる。
僕はみんなの朝食を作り始め、志音と康介は布団を干したりシーツの洗濯を始めた。
熱したフライパンに卵を割り入れベーコンを並べると、ジュッと気持ちのいい音が立つ。そして芳ばしい匂いが立ち上がった。
ふと、静かになったなと思ってソファを見てみると、周さんは修斗さんの腰をさすりながらテレビを見ていた。
……?
別に何を話してるわけでもなく、二人ともテレビをぼんやりと眺めているんだけど、何で周さんは修斗さんの腰をさすってるんだろう? 無意識なのかな?
二人の様子を見て、僕はちょっともやっとしてしまった。
康介だってあんな姿を見たら、いい気はしないと思うんだけどな。
「周さん? 修斗さんに何してるんですか?」
やっぱり見過ごすことができなくてキッチンから周さんに声をかける。僕が言いたい事が分かったのか周さんは少し慌てた様子で話し出した。
「いやな、康介の奴がやり過ぎて腰がしんどいんだとよ。さすってやると少しは楽になんだろ?」
……?
「ちょっと周! 何言ってくれちゃってんだよ! わざわざ言うことねーだろが!」
周さんの言葉に修斗さんの顔が赤くなる。あんまり見たことのないそんな表情に、僕はピンときてしまった。
「あ!……あっ! なんかごめんなさいっ!」
さっき足を捻って痛いって言ってたのは本当は違うんだ。そうか……腰、痛くなるよね。
僕も経験があるからよくわかる。わかるからこそ、余計な事を聞いてしまったと後悔した。康介が申し訳なさそうに修斗さんをおぶっていた訳もよくわかった。
志音が僕らのやりとりを見て笑ってる。
「だからそこ! なんで笑ってんの? そもそも康介煽ったのは志音君なんだよ! 声が筒抜けだったんだからな!」
珍しく修斗さんは熱くなって文句を言うし、志音はまた真っ赤になって恥ずかしそうに小さくなってるし……
もう、話の内容が恥ずかしすぎて僕は何も言えない。
「まったくよ、お前ら年中発情期かよ。こんな時まで節操ねえな……呆れるぜ……」
テレビを見ていた周さんがボソッと呟き、修斗さんが「お前に言われたくない!」と怒って蹴りを入れている。そのままふざけた周さんが修斗さんの足を持ちくすぐったりして騒ぎ始めると、康介が血相変えて二階から降りてきて、プリプリ怒りながら周さんから修斗さんを引き離して連れて行ってしまった。
やれやれ……
「おはよ! いい匂いがする! 」
ちょうど高坂先生も起きてきたので、賑やかにみんなで朝食を頂いた。そして先生まで巻き込んでさっきの話の続きを始める周さんに修斗さんが突っかかり怒っていると、先生もまた口を挟んだ。
「なんだよ修斗くん、志音のせいにして。そんな修斗くんだってなかなか可愛い声出してたじゃんか。そっちも筒抜けだったぞ?」
「……は? 声なんか出してないし! 適当なこと言ってんなよ! なぁ、康介? 俺声出してねえよな! な?」
康介は恥ずかしいのか小さくなって何も言えなくなっている。もういたたまれなくて堪らず僕は声を上げた。
「もう、みんなこの話はおしまい! こっちまで恥ずかしくなっちゃう。やめてください」
収拾がつかなくなるまえに何とか話題をそらし、その後は楽しく午前中を過ごした。
でも、当たり前なんだけど、みんなもお付き合いしてるわけだから……そういう事だってするんだよね。
修斗さんの腰が辛くなるまで康介が……って考えてしまった。そんなに激しくしたのかな?
って、ダメダメ!
ぽわんといやらしい事を想像してしまって、僕は慌てて頭に浮かんだ妄想を振り払った。
顔が熱いや……
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