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家路へ

別荘に戻るとご機嫌な修斗さんにお礼を言われた。 康介は相変わらず修斗さんにくっついて身の回りの世話を焼いてる。 ……見てるとちょっと面白い。 帰り支度を整えて、僕らはまた先生の車で出発する。 道中のサービスエリアで簡単にお昼を済ませ、とくに寄り道も無く最初の集合場所だった志音のマンションに帰ってきた。 「お疲れ様でした。先生ありがとうございました」 先生にお礼を言って僕らは現地解散になった。車から各々荷物を下ろし家路につく。 「竜太……」 僕は周さんと一緒に並んで歩く。少し歩くと周さんに呼び止められた。心なしか元気のない顔で、周さんは何も言わず僕の荷物を持ってくれた。 「あ……大丈夫ですよ。自分で持ちますから。ありがとうございます」 女の子じゃあるまいし、自分の荷物くらい自分で持てる。そう思って僕は周さんから自分の荷物を取り返した。 「なぁ、俺んち寄らね?」 周さんに言われ、断る理由もないので大きく頷く。僕ももう少し周さんと一緒にいたかったからそう言ってもらえて嬉しかった。 それと旅行中もずっと気になっていた周さんの元気のなさ。気のせいかな? とも思ったけど、やっぱり時折見せるこの表情はいつもと違って見えたから心配だった。 「周さん? 疲れちゃいましたか?」 僕の問いに「そんな事ないよ」と言う周さん。やっぱり遠回しに聞いても伝わらないか。 「今日はお袋いねえからさ……竜太泊まってってよ。俺のために夕飯作って。だめ?」 元気のない周さんにそんな事言われたらほっとけない。 「いいですよ。荷物置いたら一緒にスーパーに買い物に行きましょ」 周さんに僕が気にしてると思われないように、なるべく明るくそう言った。 周さんのアパートに着くと、玄関に入るなり抱きしめられる。明らかに様子のおかしい周さんに僕はどうしたらいいのかわからなかった。 「……どうしたの? 周さん?」 「ん、なんでもない」 なんでもないわけないよね。 でも周さんから話してくれるまでそっとしておこう。 「夕飯の買い物行きます?」 抱きしめられたまま僕は顔を上げ周さんに聞いた。 「ん……買いもんは後で。シャワー浴びよ」 「へ? あ……周さん? や、ちょっと待って……ちょっと、ちょっと!」 そのまま僕は周さんに押されるようにしてお風呂場へ連れて行かれた。 「なんでいきなりシャワー?」 「抱きたくなった。竜太、抱かせろ……」 そんなストレートに言われドキッとする。嫌じゃないけど帰ったばかりだし、元気のない周さんが気になるし、正直戸惑いしかなかった。 「そんな……待って、帰ってきたばっかなのに」 戸惑う僕に構わず、周さんは荒々しく貪るようなキスをしてきた。 ねえ、何をそんなにイライラしてるの? 僕のせいなの? 様子のおかしい周さん…… 理由がわからず、僕はちょっとだけ悲しくなった。

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