123 / 377
新しい…
「なあ……どこまで行くんだ?」
昼飯を済ませ、俺はまた無駄にうるさい車に乗せられる。
ひたすら高速をかっ飛ばすことかれこれ一時間……
「あ、ごめんね。トイレ?」
「……いや大丈夫だし」
トイレ休憩とかじゃなくてさ、どこに向かってんだ?
さっきからくだらない話ばっかで肝心なことを言わない謙誠にイライラする。
もしかして俺、攫われてるわけじゃねえよな?
今の高校生は何が楽しいんだ?
流行りの遊びはなんだ?
なんで君はそんなに背が伸びたんだ?
さっきからくだらない質問ばかり飛んでくる。
そんなの知らねえよ……
「謙誠さんさ、お喋りでフレンドリーなのはよくわかったけど……俺らどこに向かってんの? さっきから高速ずっと飛ばしてるよね?……行き先内緒なの?」
若干心配になった俺は、なんだかよくわからない鼻歌まで歌い始めた謙誠に聞いてみた。
「ん? 気になる? あのね、僕の本拠地。 周君にもどんな街なのか見てもらいたいからね。田舎だけどいいところだから。うん、住みやすいと思うよ」
楽しそうにそう言う謙誠に、俺は驚いて顔を向けた。
「は? 今なんつった? 住みやすいって……誰が住むんだ?」
「いや……誰って勿論、雅ちゃんと周君と僕でしょ」
さっきから車でビュンビュン飛ばして、まだ着かないような遠い場所に俺とお袋も住むだと??
そんなの聞いてねえし!
「おい! やめろよ、俺はそんなところ行きたくねえ! 戻れ!」
運転している謙誠の腕を掴むと、謙誠は俺の手を優しくぽんぽんと叩いた。
「急に戻れと言われても戻れないから……ごめんね。雅ちゃんから聞いてなかったんだね。別に今すぐどうこう言ってるんじゃないからさ、とりあえず僕の育った街を見て欲しいな。そういう理由ならオッケー?」
「………… 」
急にドキドキしてきた。
再婚……
新しい父親。
知らない土地。
そして新しい家族──
ともだちにシェアしよう!