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クラスで一番のイケメン
真司君の家に着くと、自分で鍵を開け入っていく──
「誰もいないの?」
「うん、今日はお袋仕事で遅いんだ」
そう聞いて誰もいないのはわかったけど、一応大きな声で「お邪魔します」と挨拶をして、二階にある真司君の部屋へ向かった。
「何か飲み物持ってくるからちょっと待ってて……」
真司君は部屋に鞄を放ると、ドタドタと下階へと降りていった。
……そういえば、周さんたちの部屋以外で友達の家って初めて来たかも。
僕はちょっと緊張しながら、床の上にとりあえず座った。
康介の部屋より綺麗に片付いてる。ちょっと僕の部屋に似てるかな? 少し違うところといえば、本棚にある本や漫画の量だ。本棚の隣の棚には、これまた沢山のDVDが並んでいた。流石に本好きな僕もここまでの量はない。
「……凄い。こんなに沢山」
思わず乗り出して覗き込んでいると、いつの間にか戻っていた真司君に背後から至近距離で声をかけられ飛び上がるほど驚いてしまった。
「びっくりした!」
「ごめんな。夢中で見てるから思わず驚かせたくなっちゃった」
ケタケタ笑いながら真司君は「興味あるのがあったら貸してあげるよ」と言って、持ってきたお茶をテーブルに置いた。
「お待たせ……じゃ始めようか」
放り投げた鞄から台本を取り出すと、こっちに来いと手招きをする。僕も予め渡されていた台本を取り出し真司君の前に座った。
明日は主に僕が一人で走っているシーンと犯人役の撮影。
「竜太はさ、こないだのアレが全力疾走……なんだよね?」
少し困った顔で僕に聞くけど、言ったじゃんか、走るの苦手だって……
「そうだけど? ねえ、僕じゃなきゃダメなの? 僕が走ってたってかっこよくないでしょう」
なんだか申し訳なくて、配役を変えてもらいたくてそう言ったのに……ていうか、今までの僕に対するみんなの扱いから考えると、相手役の女の子を僕が演じた方がいいようにも思えてくる。
そうだよ……真司君の方がよっぽどカッコいい刑事役になると思うんだけどな。
「なんで? 走るシーンは省略してどうとでも撮れるし、それに竜太はカッコいいから俺は竜太に決めたんだよ?」
真司君まで……本当何言っちゃってんの?
「おかしいよ、むしろ僕が女の子役をやった方がいいんじゃないの?」
僕がそう訴えると、真司君は眉を上げ盛大に溜息をついた。
「もうこれだよ! 本人がそんなこと言っちゃってどうすんだよ。去年の女装の時といいさ、体育祭の後の先輩たちの態度といいさ、竜太の事、可愛い可愛い言い過ぎなんだよ……そりゃ可愛いのはわかるけどさ、竜太は可愛い以前にカッコいいの! イケメンだよ。男らしい顔してる! 何でみんなそのことに気がつかないかな!」
「………… 」
いきなりの真司君の力説に凄い恥ずかしくなってしまった。
「ねえ、それ本気で言ってるの?」
はぁ? って顔で僕のことを見る真司君がちょっと怖い。
「当たり前だろ? クラスで一番イケメンでカメラ映えすると思ったから俺は竜太を選んだのに! お前自信持てよ! 悔しくねえの? 可愛い可愛い言われてさ。俺が最高にカッコよくしてやるから見返そうぜ!」
いや……真司君に言われるまであまり気にしてなかったけど。見返したいとも思ってないし……
「真司君ってさ、かなり暑苦しい感じなんだね」
「あぁ? 暑苦しいって何だよ! うるせえよ……でも、本当だよ? だから俺のこと……惚れさせてみろよ」
……え?
気がついたら僕は真司君に押し倒されていた。
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