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演技指導

「もうだめだ……気付いちまった。俺はお前の事が好きなんだよ。もう危険な目にはあわせたくない……」 真剣な眼差しの真司君に圧倒されてしまう。 「……あ、あの……真司君?」 「………… 」 沈黙── なに? この気まずいの……顔近いし、キスされるかと思った。 「……? えっ?」 鼻と鼻が触れ合いそうなほど顔を接近させたままの真司君が、ムッとした顔で突然僕に頭突きをかました。 「痛いっ! なにするの?」 「何? じゃねえよ。今の! これ竜太のセリフだよ? ……どう? ドキッとした? 惚れた?」 「????? 」 僕の上に跨ったままの真司君が、やれやれといった感じで首を振る。 「犯人を追ってる最中に相棒を人質に取られた主人公が、彼女の存在の大切さに気づいて告白するシーン! 本当は壁ドンだけど、竜太座ってたから床ドンしちゃった」 クスリと笑って、やっと僕の上から退いてくれた。 壁ドン? 床ドン?? でもドキドキしてしまって、僕はすぐに起き上がれずに真司君に抱き起こされた。 「ちょっと……大丈夫?」 キョトンとした顔で僕のことを見るもんだから、思わず声を荒げてしまった。 「なにが大丈夫? だよ! びっくりするじゃん! なに? へ? ……本当、今のなに?」 半ばパニックな僕を宥めるように、真司君が笑いながらポンポンと肩を叩いた。 「だから、今の竜太のセリフでしょ。ここ一番の見せ場なんだから、俺を惚れさせるくらいの勢いでやってくれなきゃ。で、どうだった? 今の俺みたいにやってみてよ」 「………… 」 あれ? 演技? あ……僕のセリフを真司君がやって見せてくれたの? やっと先程の状況を理解した僕は、ホッとして両手で顔を覆ってしまった。 「もう〜! 演技指導ならそうと最初に言ってよ……ビックリするじゃん……」 「え? なんだよ竜太、耳まで赤くして。俺男だぞ? そんな驚くようなことか?」 真司君は「男同士だから」と言い笑っているけど、そんな真司君の態度に少し悲しくなってしまった。 「男同士でも……僕は何度か男に襲われたことがあるんだよ。だから急だったから……ビックリしたし……ちょっと怖かった……」 恥ずかしかったけど、きっと理解してくれないと思ったから僕は打ち明けた。 真司君を見ると、ぽかんと口を開けたまま固まってる。 「真司君?」 「……マジかよ! 竜太が男に襲われたって? いや、男なのにってのも驚きだけど、あの超おっかねえ橘と谷中コンビをバックにつけてる竜太を襲うなんてそいついい度胸してるよな!」 驚いて興奮している真司君だけど、何か今ちょっとおかしな事言わなかった?

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